オランダの軍事情報サイトOryxに世界的な注目が集まっている。とりわけウクライナでの戦争において、Oryxがオープンソース・インテリジェンス(OSINT)によって作成した損耗リストは、ロシア軍の多大な損害を物証付きで明らかにしており、CNN、BBC、NHKといった世界中のメディア、さらにはイギリス国防省でも信用できる情報源として引用されている。
そのOryxの創設者、シュテイン・ミッツァー氏が来日。都内某所で世界初のロングインタビューに応じて、“趣味”であるというOSINT活動について語ってくれた。
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OSINT活動の実際とウクライナ戦争
――例えば北朝鮮の武器の流れについて、どうやって調べられているのですか?
ミッツァー 一つ例を挙げますと、例えば金正恩が部隊を視察している動画がアップされるとします。普通に動画を見ていると、戦車とかその乗員と話しているだけなんですが、よく見ると画面の後ろのほうに、ポツンと戦車みたいなものが映っている。そういうところを我々がピックアップして調べることによって、これはロシアから提供された戦車で、この戦車をもとにこの北朝鮮の戦車が作られた、と紐付けることができます。その写真は前述の本にも入っています。
よく「これを教えてくれないか」とか、「先生にならないか」というオファーが来るんですけども、基本的にこういうオファーはすべて断っています。3時間以上ある動画をコマ送りで見るような作業は、好きな人がやりたいからやるのであって、そうでない人にいくら教えてもできません。
――以前はベリングキャット(オランダの国際的な調査集団)にも携われていたそうですね。
ミッツァー ベリングキャットでは(調査の)結果だけでなく、過程も全部知りたがっていました。私としては、最後の方だけ分かればそれで良いんですが、彼らは最終目標にどうやって到達したかも全部知ろうとしていたので、私にはちょっと合いませんでしたね。ベリングキャットから始めて、OSINTに進むというのがもっとも望ましいやり方だとは思います。
オランダでのOSINT活動が盛んな理由
――いろんな国を調査対象にされていますが、言葉の問題はどうしていますか?
ミッツァー 友達に翻訳してくれる人たちがいるので、彼らを通しています。最近は素晴らしい翻訳アプリも出ていますので、言葉の壁はあんまり感じたことはないです。単語を調べる努力は日々欠かしていませんが。
――ベリングキャットもオランダを拠点にしていますけど、OSINT活動がオランダで盛んなのは何か理由があるんでしょうか?
ミッツァー 実際に何故なのかわからないですけども、どういうわけか流行りました。やることがない時間が多いんで、ちょっとした暇つぶしにっていう感じかな?