「橋本環奈×山田涼介、恋愛関係に必ず生じる性欲みたいなものが全く想像つかない。ミッキーとミニー見てる気分」

 ドラマ中になんとなくつぶやいた一言が、ちょっとバズった。あんなにも拡散されるとは思っていなかったので、全体的に雑な表現になっているのはご容赦願いたい。このツイートに“いいね”を押した3万もの人たち全員が同意しているわけではないだろうが、同じようなことを考えていた人は他にもいるのだと思った。この所感を言葉にするならば、“安心感”という表現になるのかもしれない。

これは第二の『花より男子』だ

 橋本環奈×山田涼介のドラマ『王様に捧ぐ薬指』(TBS系/以下『王ささ』)は、恋愛感情ゼロで打算的なメリット婚をした夫婦が、次第に惹かれあい、本物の愛へと発展していくストーリーである。

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 主人公の綾華(橋本環奈)は、ウェディングプランナーとして働いているが、その美貌ゆえに各所でトラブルメーカーになってしまい、同僚からは“悪女”扱いされていた。またもや女性客からクレームをつけられたある日、周りから“王様”と呼ばれる社長・東郷(山田涼介)から契約結婚を申し込まれる。綾華は貧乏な実家を支えるため、東郷は自らが広告塔となって経営を立て直すために、悪女と王様の偽装結婚生活が始まった。

『王様に捧ぐ薬指』(TBSテレビ)HPより

 原作は2014年から2017年にかけて連載された同名漫画。約10年前の作品とあって、ドラマ版では、バチェラーを模した恋愛サバイバル番組に東郷が出演していたエピソードや、夫婦がカップルチャンネルを主な拠点としてプロモーション活動をしているといった設定が追加されている。

 橋本環奈×山田涼介の組み合わせ以前に、実はドラマそのものが、原作を大きく改変した“安心設計”になっている。作者のわたなべ志穂は『Sho-Comi』や『Cheese!』といった“オトナ向けの少女漫画誌”で活躍しており、『王ささ』もかなりアダルティーな作品なのだが、そのような描写は(いまのところ)ドラマ版には出てこない。

 その代わりに原作よりも誇張されているのが、主人公の大家族設定だ。5人兄妹の長女である綾華が大黒柱となって家計を支えているのは同じだが、ドラマ版では“貧乏”のラベルが強調され、御曹司の東郷に見初められる人生大逆転のシンデレラストーリーが、第二の軸になっている。

 さらに東郷の母役には松嶋菜々子、主題歌はHey!Say!JUMPによる王道キラキラアイドルソング、ヒロインではなく、御曹司の方から始まるラブストーリー……。そう、ドラマ版『王ささ』が目指すのは、同枠で放送されていた契約結婚がテーマの『逃げ恥』ではなく、第二の『花より男子』なのである。