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夫婦として苦楽を共にするにつれて円熟味を増していった2人だが、選挙の場面でも政治家と妻の役割分担を明確にしていた。
政治家は、支援者や後援会を夫婦で一緒に回って応援をお願いする。有権者との信頼関係で成り立っているとも言える。そのため安倍は「職業として政治家の道を選んだ人間が離婚することには反対だ」とよく口にしていた。
「ごく初期のころは不妊治療も…」
それがよく分かる場面がある。
安倍は、英王室を舞台にしたネットフリックスのドラマ「ザ・クラウン」を配信直後から熱心に観ていた。
シーズン2ではエリザベス女王が、夫であるフィリップの浮気を知る場面が一つの山場だ。エリザベスは離婚を避けるため「私とディールしましょう」と提案し、フィリップに「殿下」の称号を与え、それと引き換えに夫婦円満を図るのだ。
安倍は「エリザベスのすごいところは、女王の威厳を守ることを優先し、私情に走らなかったことだ。王室を守りぬく姿が見事に描かれているよ」と興奮気味に話し、身振り手振りを交えて、何度もそのシーンを再現していた。
第1次政権発足当時、昭恵は月刊「文藝春秋」(2006年11月号)に掲載された手記で「ごく初期のころは不妊治療も受けました。(中略)子どもに恵まれなかったことも、すべては運命であり、それを受け入れるべきだと考えています」と打ち明けている。
安倍自身は子供が好きで、遊説先などで、周りに集まった小学生に「本物だ」と髪を引っ張られてもニコニコ笑っていたし、後援者の赤ん坊を嬉しそうに抱っこしていた。ある議員の不妊治療の話に触れて、命の大切さを語っていたこともある。