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元子役・加藤諒が振り返る「仕事なかった時代」

テレビっ子・加藤諒さんインタビュー #2

本谷有希子舞台にどうしても出たかった

―― 大抜擢。間近で見た野田秀樹という人は、どんな印象でしたか?

加藤 ホントに、偉大な人っていうのは分かってるんですけど、“普通のおじちゃん”です(笑)。なんですけど、芝居を作る段になると「ここはこうだから」って的確なアドバイスをしてくださったり、「もっとこうしてみようよ」みたいな、アイデアがこんこんと湧き出ていて、気迫というか、演出家としての存在感に圧倒されました。

 

―― 舞台はその時が初めてですか?

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加藤 そうです。初舞台がNODA MAP。

―― すごいですね。

加藤 僕、舞台の演出家さんを言うといつも演劇エリートってすごい言われるんです。全然エリートじゃないんですけど。

―― でも、ふりだしが野田秀樹ってやっぱりすごい。

加藤 ちょっとビビりますよね。

―― 野田さんの他はどんな方と?

加藤 あとは河原雅彦さん、本谷有希子さん。

―― 本谷さんの作品にも出られたんですね。

加藤 これも大学時代、パルコ劇場に行ったら、本谷作品への出演者募集を見つけたんです。さっそく事務所に「これ受けたい」って言ったら「アンサンブルだからちょっと諒くんは……」って感じで言われたんですけど、どうしても受けたいって粘って。それで受かっちゃいました。大学時代は自分でオーディションを探しましたし、ワークショップとかも探して、それこそ「生き残る」ために必死だったですね。本当にこの時代、仕事なかったですから……。

安達祐実さんはめっちゃヤバいですよ!

―― ドラマ『主に泣いてます』は大学卒業してからですか?

加藤 大学4年の時に本谷さんのお芝居、卒業してから『主に泣いてます』ですね。

―― 『主に泣いてます』もオーディションだったんですか?

加藤 じゃなかったんですよ、それが! その前の時期が仕事がなさすぎて、同じ事務所の若手の子たちはみんな仕事決まったりとかしてて、自分だけ何も決まらない。それで、事務所から「明日お話があるんで来てください」と。「うわ、これはクビだわ」と思って、母にも「そろそろクビかもしれない」って言って行ったら『主泣き』が決まって、「イェーイ!」みたいな感じで。

 

―― 大逆転。

加藤 僕がやってた役(小桃)のオーディションにはあんまりイメージに合う人がいなかったそうです。それで、僕に声をかけていただいたんです。

―― 『主に泣いてます』では子役出身の先輩である安達祐実さんとも共演されてますね。安達さんは加藤さんから見てどんな存在なんですか?

加藤 もうもう、偉大すぎますよ! 安達祐実さんはめっちゃヤバいですよ! 『主に泣いてます』では、リハーサルで急にラップ調になって「Yo! Yo!」とかやり始めたりとか(笑)、ト書きで「涙をためながら」って書かれている場面では、真珠みたいな涙をずっと涙袋にためたまま落とさない演技をされたり。

―― たまってるんだ!

加藤 で、そこをアップで抜かれてて。カメラ越しにプロデューサーさんたちと見ながら「落ちない、まだ落ちない!」みたいな。演技力と技術、めっちゃスゴいです。