のちに対談で三谷に自分に愛人役を当てた真意を訊くと、彼は鈴木について《本質は正妻タイプですよ》と断ったうえで、脚本執筆にあたり彼女のイメージをつかむため初めて会ったとき、《見た目から、愛人役を演じたら面白いなと思った》と告白された(『文藝春秋』2014年1月号)。
これを受けて彼女は《「私って愛人顔だから」なんてセリフまであって。相当インパクトが強かったようで、今でもあのセリフは面白かったってよく言われるんですよ。おかげさまで、私はあれから愛人の役も増えて役が広がりました》と語っている。
ときには激しい官能シーンも熱演
実際、これ以降、役の幅は広がり、映画『血と骨』(2004年)やドラマ『セカンドバージン』(2010年、翌年には映画化もされた)などでは、デビュー当時の清純派イメージを覆すかのように激しい官能シーンを演じた。そのたびに男性週刊誌で興味本位に書き立てられ、鈴木は体当たりで演技しながらも脱いだ姿をほとんど見せないといちゃもんをつけられたりもした。
当人としてみれば、濡れ場ばかりに話題が集中するのは本意ではなかっただろう。それでも、これら作品は手応えのある仕事ではあったようだ。『血と骨』では、もともと仕事とプライベートの切り替えはスムーズなほうだったのに、この撮影期間は役に引きずり込まれてしまい、役との新たな付き合い方を学んだ大きな転機にもなったという(『週刊文春』2011年4月14日号)。
鈴木は、演じる役に自分を重ねて考えたり、自らの経験や感情を投影したりすることはまずないという。『セカンドバージン』でヒロインの出版プロデューサー・るいを演じた際もそれは変わらなかったが、ひとつだけ自分がしていることをるいにさせた。
それは「ペディキュアは常に赤」ということだ。彼女いわく《手は自然のままだけれど、足先はいつも真紅に染めているというのがるいらしいかなと思ったんです》(『25ans』2011年10月号)。