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5月の明治座で、團子は修業を丹念に積み重ねてきたことを垣間見せてくれたが、今後、澤瀉屋の座頭として一本立ちしていくためには、猿之助麾下での勉強がどうしても必要なのだ。
猿之助の経歴に照らし合わせるならば、「少なくともあと10年」は、澤瀉屋の代表的な演目、そして古典について学びの時間が欲しかったはずだ。
本来ならば、團子にはそれが保証されていた。
大きすぎる“猿之助の不在”
昨年、猿之助は実に9カ月も歌舞伎座に出演し、文字通り大車輪の活躍を見せた。それはすなわち、團子もまた、多くのことを歌舞伎座で吸収できたことを意味する。
猿之助はこの6月に歌舞伎座で『傾城反魂香』の女房おとく、7月はしばらく上演されていなかった『菊宴月白浪』、8月、9月は『新・水滸伝』が予定されていた。
向こう4カ月に限っても、團子にとっては猿之助の下で学ぶ機会が失われる可能性がある。
再び、猿之助から團子に芸が伝わることがあるのだろうか?
猿之助の将来について、いま何かを語ることはまったく意味がないし、どうなるかも想像がつかない。ただ、歌舞伎ファンの立場から言うならば、猿之助が生きていることで、團子につながるものがあると思っている。
その意味で、猿之助が生きていることは大きい。もしも、猿之助までが鬼籍に入っていたとしたら……。團子は継承すべきことを、永遠に失うところだった。
今後、司法の捜査がどのように進んでいくかは想像がつかないし、一度は自死を図った人間が、簡単に歌舞伎の世界に戻って来られるとも思えない。
それでも、あれだけ歌舞伎のことを大切に思っていた猿之助が、澤瀉屋の財産を継承することに前向きになってくれる日が来ることを祈りたい。