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 かっぱ寿司とはま寿司はひたすら安さにこだわる経営方針が似ている。どれだけ安価に仕入れられるか、どこまでひと皿の値段を抑えられるか、ライバル会社の営業秘密を喉から手が出るほど欲しがったのも理解できなくはない。だが、かっぱ寿司は2000年代前半には、業界1位だったこともある。近年の凋落ぶりの原因はなんなのか。

かっぱ寿司には郊外型の店舗が多い

 前出の業界担当記者は「回転寿司ブームが起こり、業界の競争が過熱していく過程で、かっぱ寿司は買収などで混乱した時期もありました」と話す。

かっぱ寿司の一人負け?

「『まわらない高級店』と比較すれば、おいしくない、と言われるのは回転寿司の宿命ですが、そのあおりを最も受けているのが、安さにこだわるかっぱ寿司ともいえます。品質向上のためにコストをかけると、値上げせざるをえなくなり、他店との差異化ができないという板挟み状態。窮地を脱するため類似するはま寿司の営業秘密に手を出してしまったのかもしれません」

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「100円」の謳い文句は死守すべきラインだったのか(読者提供)

 また、転職先で元の職場の営業秘密を漏らすと逮捕までされる可能性があることは、世のビジネスマンに衝撃を与えた。昨年には元ソフトバンク社員が転職先の楽天モバイルに技術情報を不正に持ち出したとして警視庁に逮捕されたケースもあった。転職はいまや働く人々にとって当たり前。そもそも転職先は前職の経験を評価した上で採用していることも多い。不正競争防止法に違反する基準はなんなのだろうか。

転職時に留意すべきこと

「営業秘密とは、簡単に言うと①公になっていない②社内で厳重に管理されている③有用な情報であるなどの条件を満たす必要があります。今回、はま寿司から持ち出された情報は、顧客にネタを安く提供するための最重要ともいえるデータで決して公にはされずに、社内でも限られた人間しかアクセスできないものでした」(警視庁関係者)

ボックス席は家族連れでにぎわう(読者提供)

 社長が逮捕された翌日10月1日は土曜日だった。さいたま市の郊外にあるかっぱ寿司を昼時にのぞくと、店内は家族連れを中心に賑わっていた。近くに住む30代の男性は「息子が好きだから来た。安いだけでまずいという評判はありますが、実際はおいしく食べられるネタもありますよ。はま寿司はショッピングモールに入っていて、何か他の用事があればそっちに行きます。どっちの方がおいしいとかそういうのは特にないかな…」と語った。

 顧客に選んでもらうための血で血を洗う仁義なき戦いは、まだ続くのかもしれない。