そして修正したデザインを提出し、代理店担当者にも電話で報告し、またしばらく待ちます。
ただひたすらに待ちつづけます。犬のように待ちます。
この時すでに夜21時ごろで、もう終電で帰れないことを覚悟し始めます。
先輩はこの状況に慣れているのか、机に突っ伏して仮眠をとっています。僕は電話がきたら2コール以内に取らないといけないので、寝ずに待機します。この待ち時間に今までの制作物をポートフォリオ(作品集)にまとめたりしています。
1時間待ったところで返事がきました。またしても修正があるようです。このやりとりをあと2回繰り返します。デザインの修正とクライアント確認を繰り返し、どんどん時間が過ぎていきます。結局校了したのは深夜3時すぎです。
このクライアントは毎回こんな働き方を要求してきます。今は受ける回数も減ってきましたが、多かった頃は毎月依頼がきて、入稿日は深夜4時頃まで対応していました。
このままだと脳梗塞になって死んでしまいそうと思うことも
印刷会社の担当者は、僕たちがデータを送ってから作業開始なのでさらに大変です。みんなお金で買われて働いている奴隷です。
ほかの案件も担当しているので、寝ることなく翌日も朝から働きます。先輩は帰宅して仮眠を取ってから出社します。いい身分です。
この生活がいつまでつづくのだろうと不安に思ったり、このままだと脳梗塞になって死んでしまいそうとか思うこともありましたが、心のどこかでこの働き方を楽しんでいたりもします。
ところで、広告業界に入って意味がわからないと感じたのが、こうした待ち時間です。待ち時間の多い仕事を繰り返したせいで、待つという行為が苦手になりました。
ラーメン屋で並ぶのも苦手となり、美味しいラーメン屋に行くことはすっかりなくなってしまいました。
「みなし残業」という悪魔との契約
こんなブラックな労働環境を支えているのが「みなし残業」です。これは悪魔との契約に近く、これを結んだら最後、どれだけ残業しようが残業代は0円です。