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「みんなお金で買われた奴隷です」手取り16万円で残業代ゼロ、終電では帰れない…“社畜デザイナー”が明かす広告業界のブラックな実態

『ブラック企業で生き抜く社畜を見守る本』より #1

2023/06/05
note

 デザインのやり取りもとても大変で、クライアント確認と修正作業が延々と続きます。そして、入稿当日となった時に事件が起こりました。

代理店の営業から怒号の電話

 通常、デザインが完成したら、広告代理店の営業がクライアントに最終確認をとって校了(クライアントにこれ以上の修正が入らないことを承諾いただくこと)、そして入稿(デザインデータを印刷工程に進めること)と進めます。

 広告代理店の営業はわざわざ九州にあるクライアントの本社に出向いていて、入稿に向けて最終の社長確認をしています。こうやって広告代理店のクライアントファーストな働き方を見ていると、どの会社でもみんな身を削りながら働いていて大変だなと感じます。

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 その日は、入稿に向けて先輩とスタンバイしていました。何ページもあるので、先輩と作業を手分けしています。

 夕方になり、「締め切り」に設定した時刻になりました。それまでに来ていたクライアントからの修正内容は反映し、あとは校了のゴーサインを待つばかり。その時、代理店の営業から電話がかかってきました。

「社長から修正があるみたいだからちょっと待ってて! 今からメールで修正箇所送るから!」とのことです。

 そう言われたら我々社畜は待つしかありません。30分ほど待ったところで、メールが届きました。間髪入れずに代理店の営業から電話も来ます。

「何時にアップできそう?」 

 想定時間を伝えると

「クライアントが待ってるんだからもっと早くしてくれ!」

 と怒号が飛んできます。じゃあなんで聞いてきたんだろう。と思いますが、何も言い返すことはできません。

「待つ」という行為が苦手に

 そして僕と先輩は急いで作業をします。この時だけは作業スピードについて来られないMacの処理速度にイライラします。画像データも多く扱っていて、ページ数も多いのでデータがかなり重いです。