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「農業機械などは自己資金で購入している。資金は豊富みたいですね」

 地元の農業関係者は私の取材にそう教えてくれた。

 複数の大型機械の購入、事務所の購入、ガラス温室付きの農地の買収などを合計すると、軽く「億」は超えるとみられる。合同会社だから、すべての出資者(スポンサー)が公表されることはない。

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 看板の近くに住む女性に聞いてみたら、こう話してくれた。

「自分たちで農業を始めたい」という外国人が現れたが…

「ここらはもう(農業)やる人いないっぺよ。んだから買う人いたら売るんでねーの」

「あの青い看板は中国。3年前からあるよ」

「土浦で断られたからここに来たらしいよ。(買収の)お金を出してるのは、大阪の人だっていう話だよ」

 調べてみると、外国人農業作業者の拠点は、阿見町に来る前には土浦市にあったようで、大企業の研修所用に使われていた堅固なビルを外国人3人が共有で取得したという。18年のことで、物件の評価額は数億円。その場所に20~30人の労働者が暮らし、農作業に従事していたという。

 そうこうしているうち、「当地で農地を借りて野菜を作りたい」「自分たちで農業を始めたい」という外国人が現れるようになり、複数の自治体、農業委員会での相談が始まった。

 当初は、農業経験などの面で不安視され、借受希望は実現しなかったが、自治体ごとに対応が分かれた。

「農地法第3条(*1)の許可要件 をクリアすれば不許可にする理由がないので、許可せざるを得ない」

*1 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。

農村地帯の過疎化

 農地売買を認めた自治体(農業委員会)は、苦慮している。

 現時点で、茨城県内に住む外国人や外国法人(外資系法人含む)による農地の買収・借受は公表されていないが、ほぼ全域に及んでいる。

 茨城県の農地率は29.0%で全国一だが、北関東の農村地帯は思いのほか過疎が進んでいて、手放す世帯が増えている。この傾向は、優良農地を抱える首都圏の他県でも同じだ。

 不安視する農業関係者が小さな声でいう。

「ここでこのスキーム(仕組み)が成功したら、全国展開していくのでは?」

 郊外の過疎化なら、首都圏の他の地区、千葉県、埼玉県……にも共通してある。同様の外資買収はすでにかなり進んでいると見た方がよい。