安全保障に関わってくる問題であるにもかかわらず、日本全国での外資による国土買収は止むことなく続いている。いったい土地買収の現場ではどのような思惑が蠢き、何が起こっているのか。
ここでは、姫路大学特任教授・理事を務める平野秀樹氏の著書『サイレント国土買収 再エネ礼賛の罠』(角川新書)の一部を抜粋。再生エネルギーの種地を探し、全国で地上げを行う会社で働く人物を直撃した際のもようを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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地上げ屋たち
ここ2、3年の特徴として、土地買収の主戦場は、もう太陽光発電ではない。
風力発電だ。買取価格は下がってきたが、ソーラーよりはまだましだ。陸上風力は15円/KW時(23年)で、商売としてまだやりようはある。
風力発電の話の前に、まずはこの話題から入りたい。再エネ事業の基盤は土地取得だろう。それを担うのが「地上げ屋」だ。地上げ屋ってどういう人なのだろう?
私はかねて、巨大プロジェクトのとっかかりを担う人たちに逢ってみたいと探していた。どんな人がいかにして場所を選び、どんなふうに地元に入り、地主らを口説いていくのだろう?
爾来(じらい)15年--。
ようやく「どうやらあそこの事務所は、全国いろんなところに顔を出しているみたいだ」との情報を得た。私はとり持ってくれた人に自分の関心を語り、訪問する約束をとりつけた。
目立たない平屋の本社事務所にデジタル機器を完備
それは不便な地方都市の一画にある奇妙な事務所だった。
表向きは一次産業を担う法人だが、挨拶をかわした人の名刺をよく見ると株式会社でもある。本社のほかに県外の支店を複数もつ。仕事の種類は再生エネルギーの種地を探すというのがメインで、全国の土地探しと買収をやっている。社内でこの仕事を担当するメンバーは3名ほどだという。
一次産業を担う法人であることを前面に出しているところが、うまいと感じた。交渉相手は安心するだろう。「一次産業者は自然を相手にしていて素朴で純粋な人が多い」という先入観が警戒感を和らげる。現地へすっと入っていけるし、買収話も土建屋やコンサル業者よりも持ちかけやすいだろう。