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 本社事務所は平屋で目立たない場所にあった。その一室はさながら警備会社のモニター室のようだった。大型ディスプレイが主任(データマン)をとり囲むように三面置かれてある。整頓されていて、長机には二つのキーボードとタブレットが、L字型に置かれたもう一つの長机にも複数のデスクトップパソコンが並べられている。同時進行で複数のデータを処理するのだ。

 目立たない場所の平屋に、こんなデジタル機器完備の一室があるとは、ちょっと驚きだ。

徹底したコストカット 現地へは弾丸出張

 集める情報は、登記簿から得る所有者情報のほか、土地規制情報、鉱区権者情報等々だ。それらを一斉に画面に映し出し、最適の立地を探す。土地の買い占めを依頼してくる人の求めに応じ、狙いをつけたエリアの地権者や周辺環境について、ありとあらゆるデータを調べ上げる。地上げのための下準備である。

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 部屋の壁一面には、地上げ途中の白地図と航空写真が複数貼り出されていた。北海道、東北から九州・沖縄の米軍基地周辺まである。

 リーダーによると、着手から完了までのおおまかな手順は、次のようになっている。

(1)依頼者からおおまかな買収エリアの要請を受ける

(2)周辺の関連情報を収集する

(3)箇所の絞り込みを行っていく

(4)依頼者からゴーサインが出たら、現地に飛んでいく

 コストカットは徹底されていて、現地へは弾丸出張。全国どこでもほぼ日帰りだという。

買収資金の出所聞くと…

「この仕事は本当に手間がかかって、時間もかかるんです。そこのところの苦労が(依頼者には)なかなかわかってもらえなくて……」

 リーダーはそうぼやいた。

 土地買収で一番手間どるのは、地権者の信用を得るまでだという。その過程はなかなか見えづらい。

「交渉は本当に神経を使う。その割に見返り(報酬)がね……」

 本音を言っていると感じた。

 地上げ途中の地元説明会では、エキサイトした住民たちから好き勝手を言われ、怒号が飛びかい、罵声を浴びせられることもしばしばだろう。合法的に再エネを進めているのに、なぜそこまで責められなければならないのか、理不尽だと思うこともあったに違いない。