陸揚げ局とは、海底ケーブルの引き揚げにかかわる専用施設のことだ。かつてはダム計画や道路計画が政治家や行政から漏れ聞こえてくると、その周辺一帯を早耳たちが先買いした。それと同じ動きである。
金に糸目をつけず、とにかく買い漁る目的は
地上げに必要なデータの種類は、航空写真、海底ケーブル情報のほか、船舶通航量などの海洋状況もある。政府の海底ケーブルがらみの公共事業情報も欠かせない。これらを重ね合わせ、それらをもとに周到に場所を選んでいく。
こうした周辺情報は本来、安全保障の面からも迷彩的なマスキングをかけて国家として保護すべきなのだが、なぜか我が国はほぼフルオープンで全世界へ公開している。
金に糸目をつけず、とにかく買い漁るのは、風力発電だけが目的とは思えない。経済的な目的以外にもあるのではないか。まとまった風力発電用地をほしがる動きは「採算性度外視の目的をもつ買収グループで安全保障がらみ」「資金源は海外」と私は見ている。
虎視眈々と、国家政策として海外のインフラを押さえたがっている国は、これらの重要インフラが敷かれる土地に関心を寄せる。逆にいえば、買う方が高い買取価格を提示するから、地上げビジネスが成立しているのだ。
「デジタル田園都市国家構想」で先買い競争が衰えない
こうした場所は今後、ミサイル基地や防衛通信施設と同じくらいの重要性をもつため引き合いがあり、値上がりが見込めるだろう。
さらなる追い風も吹いている。
「デジタル田園都市国家構想」だ。
岸田総理にとっての一丁目一番地の重点公共事業で、東京一極集中を是正し、また経済安保上のリスクを回避し、大災害への強靭性を高めるため、海底ケーブルの陸揚げ拠点を分散させる工事をテンポアップしたいとしている。
それゆえ、ここしばらくは海岸線や陸揚げ局のサイトをめぐる先買い競争は衰えない。北海道石狩湾、宮城県沿岸、千葉県沿岸……。そういった場所の地上げを業とするフロント企業は忙しくなっていくはずだ。