1970年代半ばから80年代にかけて、投機目的で分譲されたミニ住宅地。その多くが現在、俗に「限界住宅地」「超郊外住宅地」、あるいは「限界ニュータウン」と呼ばれるような荒れた分譲地となっている。

 道路は狭く、アクセスする公共交通手段もなく、上下水道なし──買う人もなく、売れない分譲区画は荒廃していく。千葉県の北東部などで実際にそんな限界ニュータウンに赴き、現状を辿ってきた、吉川祐介氏の著書『限界ニュータウン――荒廃する超郊外の分譲地』より、荒れ果てる現地の今について、一部を抜粋して掲載する。

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 ひと口に「限界ニュータウン」「限界分譲地」といっても、ぜんぶで十区画程度の小規模なものから、数百区画にもおよぶ「住宅団地」まで、その規模はさまざまだが、独立した自治会や管理組合が形成されていない小規模な限界分譲地の多くに共通してみられるのが、私道をはじめとした共用部の著しい老朽化である。

 

 自家用車で限界分譲地を訪問するさい、僕は現況をたしかめるまえにいきなり車両で侵入することは避けるようにしている。古い分譲地は道路の幅員が狭く、駐車場所の確保が難しいということもあるが、もうひとつ、管理の悪い分譲地は私道の荒廃が進み、部分的に車両の通行が困難となっている可能性が高いためである。

 たとえ販売当初は舗装工事を施されていた分譲地であっても、その後の数十年、いっさいのメンテナンスもおこなわれてこなかったような道路は、舗装がはがれ、多数の陥没箇所が発生しており、そんな道をうっかり速度をゆるめず通過しようものなら、脳天を天井に強打しかねないほど激しくバウンドしてしまう。

陥没した道路、朽ちはてた公園。雨のあとに入ろうものなら…

 また千葉県北東部には、横着して最初から未舗装の砂利道のまま販売された分譲地も少なくない。

 

 仮に雨天後、うかつに二輪駆動車でそのような分譲地に入ろうものなら、坂道でタイヤがぬかるみにとられてスタックしかねない。だれも刈りとることのない伸び放題の路肩の雑草の裏に隠れた、ふたのない側溝で脱輪する危険性もある。周囲に家屋のない道路は、路肩どころか道路全体に、雑草や空き地の雑木の横枝、さらにはツタまでもが縦横無尽に生え散らかし、もはや通行することすら困難なほどだ。