千葉県の北東部や外房方面には、俗に「限界住宅地」「超郊外住宅地」、あるいは「限界ニュータウン」と呼ばれるような分譲地が数多く存在する。そのほとんどが1970年代半ばから80年代にかけて、投機目的で分譲されたミニ住宅地だ。
道路も狭く、アクセスする公共交通手段も、上下水道ない──。当然、買う人もなく、売れない分譲区画は荒れ地化していく。一体、どのようにこうした場所で住宅地が作られていったのか。この限界ニュータウンの現状を取材した吉川祐介氏の著書『限界ニュータウン――荒廃する超郊外の分譲地』より、一部を抜粋して掲載する。
◆◆◆
「一般ユーザーの購買意欲を喚起させる利便性がまったくない」自家用車以外、交通手段がないかつての分譲地
不動産は、一にも二にも立地がすべてといわれるほど、立地の良し悪しがストレートに価格に反映される商品だ。
田舎暮らしや就農希望者むきの農村の古民家や、避暑地のリゾート物件などをのぞけば、基本的に分譲住宅地というものは、売り手側は最寄り駅や主要な商業地までの所要時間などを広告に記載して、その利便性を強調するものであるし、買い手側もまた、予算に収まる範囲で可能なかぎり利便性の高い地域を選択するものである。
ところが、多くの限界分譲地には、そんな一般ユーザーの購買意欲を喚起させるような利便性がまったくない。もともと北総をふくめた千葉県北東部は鉄道網が貧弱で交通空白地帯が多く、地域住民の移動手段は自家用車が主流であるとはいえ、駅から徒歩では行けない立地にもかかわらず、ほとんどの場合、実用に耐えうる運行本数が確保されたバス路線も存在しない。それはベッドタウンの概念から考えれば、ひどく奇妙なものだ。
限界分譲地は既存の農村集落からも離れた山林や田畑を造成したものが多いため、周辺には商業施設はおろか、自動販売機すら存在しないことが多い。