共有地の荒廃が続く根本原因は…
だが、千葉県北東部の限界分譲地の場合、共有地の荒廃が続いている根本的原因は、不明な所有者の合意がとれないことにあるのではない。たしかに、登記簿上の住所が変更されておらず民間レベルでは連絡がとれなくなっている区画があるのも事実だが、それ以前に、多くの区画所有者・利用者にとって、共用部や設備の維持管理が喫緊の課題となりえないという限界分譲地固有の事情があり、これこそが最大の要因である。
区画所有者の大部分をしめる不在地主のほとんどは地域外の在住で、所有地の管理を地元業者に一任しているが、業者は作業に支障が出る場合をのぞき、基本的には依頼された所有地を整備するのみで、私道などの共用部分の管理はおこなわない。
不在地主自身も、遠く離れた所有地の共用部分が管理不全に陥ろうとも、自身の生活に影響が生じるわけではなく、おそらくほとんどの場合は、その荒廃すら把握していないのではと思われる。
一方、じっさいにその地で生活する居住者にとって、共用部分の荒廃は生活環境に直結する重大な問題のはずだが、この場合もまた、さまざまな問題をはらんでいる。
賃貸化が生む「無関心」
そもそも多くの郊外型住宅地と同様、千葉県北東部の限界分譲地も開発時期の古いところでは高齢世帯が多くなっており、体力的な事情で共用部分の自主管理が厳しくなっている。年齢的にも、いまから多額の費用を負担してまで、自宅やその周辺の再整備をおこなおうという気概のある人は少ない。
また、限界分譲地は、分譲後に投機目的の取得者をいったんはさんで流通しているので、一般的な郊外型ニュータウンや大型マンションのような、短期間の集中的な住民の流入が発生しておらず、世帯によって転入時期がバラバラである。
こういった遠郊外部の住宅の購入者のなかには、十分な支払い能力を有しないまま住宅ローンを組んでしまった世帯も少なくなく、八街市や山武市などは一時期、住宅ローン返済の滞納による競売物件数が、全国でもトップクラスにまで跳ね上がった。
加えて、子どもの進学を機に、交通不便な限界分譲地から、通学がもっと容易な地域へ転居してしまうこともあり、こうして手放された住宅は、その廉価さゆえに賃貸オーナーに取得され、新たに貸しにだされることが多い。