いきなり「うるせー、黙れ!」とキレだした
今は空き家となり草木が繁る章平容疑者の実家の前で、少年時代の章平容疑者をよく知る人物が語る。
「ここはもともと山を切り開いてできたニュータウンで、章平容疑者が子供だった20年ぐらい前は家族連れが多く移り住んできていたんです。そんな街で、次々新築の戸建てが立てられる中、1軒だけ古くからあるボロボロの家に住んでいたのが小森一家でした。母方の祖母と、父と母、そして5人の兄弟の8人が狭い家に住んでいた。5人兄弟の長男が章平容疑者でした。
ただ、家庭が複雑でね。最初は一家そろって8人で住んでいたのですが、祖母だけをこの家に残して、同じ団地内の別の家に住んだかと思えば、今度は離婚でもしたのか、母親だけが祖母の家に帰ってきたりと、家族内で移動を繰り返していました。夫婦の仲はかなり悪かったようです。章平容疑者は兄弟の中でも親から可愛がられていなくて、『お前なんて出ていけ』ときつい言葉を投げかけられているところをよく見かけました。家の中は足の踏み場もなく、ガレージも整備されていない状態でしたが、花が好きだったようで庭にたくさんの花が咲いていました。愛情のバランスが崩れた一家だなと感じたのを覚えています」
小学校時代の同級生が覚えているのは、章平容疑者が「会話が苦手で友達が少なく、いつも孤立しがちだった」ことだ。
「章平の家はとにかく貧しくてね。ある時、私の家に遊びに来たときは、章平が勝手にうちの冷蔵庫を漁っていて驚いたことがあります。着ている服はボロボロで、いつも一人で、完全に浮いてました。学校の休み時間はブランコなど1人でできる遊びをしたり、意味もなく校庭を走り回ったりしていました。
それなのに静かで、誰かに構ってほしいのか、目線を下げたままボソボソと独り言をいっていることが多かった。話しかけてみると、いきなり『うるせー、黙れ!』とキレだしたり、胃腸風邪にかかったときに刺激の強いオレンジジュースを一気飲みして吐いたりと、行動が理解できませんでした。成績も最下位のあたりだったと思います。小学校にはなじめなかったのか、結局1人だけ『剣道が強い学校にいく』といって、実家からは少し距離のある地元の子が普通に行く公立中学校とは別の中学校に入ることになりました」
常に挙動不審で会話が続かない
しかし、中学校に入ってからも、章平容疑者の“謎の行動”は続いた。当時の同級生が語る。
「常に挙動不審で会話が続かない。友達もいないのであだ名も特になく、私たちは先生たちと同様に彼を『小森』と呼んでいました。剣道部に所属していたと思いますが、練習している姿を見た記憶はありませんね。剣道部は、全国大会常連の強豪だったので、練習もきつい。入ってすぐに辞めたのかもしれません。一学年に11クラスもあるマンモス校で、毎日どこかの教室のガラスが割れるぐらい荒れている学校でした。生徒も個性の強いメンツばかりだったので、章平は完全に埋もれていたと思います。ただ、教室の隅で、同じように友達の少ないぽっちゃりとした女の子と休み時間をよく過ごしていたのは、はっきりと覚えていますね。当時から目つきはきつかった。ニュースで今のあいつを見ましたが、あの目つきは変わらないなと。マスクをしてても一目でわかりました」