「まつり」や「函館の女」など数々の名曲を歌ってきた演歌歌手の北島三郎さん(86)。歌手生活60周年を迎え、昨年末には明治座で「ファイナルコンサート」を行なってから、「引退」や「終活」の噂が頻りに報じられるようになった。今回、「文藝春秋」編集部の取材に対して、初めて「引退」についての想いを語った。
歌手活動を引退するわけではない
〈70の声を聞く頃から、俺も体調的に「歳をとったかな」と感じるようになってきてね。7年前に頸椎症性脊髄症を患ってからかな、ちょっとした段差にも躓いたり、物を取るにもフラッと来たりすることが増えたんです。4年前には自宅で洋服を取ろうとしたら、ズルっと滑って、そのままひっくり返っちゃった。病院の診断で、足の指を7本も骨折してるって言うので驚きましたよ。
(中略)いざ自分が怪我すると、どこか気も弱くなる。70代以上の方は、みんな同じ不安を抱えてるんじゃないかな。でも、そんなときは、ご先祖様や神様が、「お前はずっと走りっぱなしだったから、少しこの辺で休みなさい」と言ってくれているんだと思うようにしてますよ〉
6月5日には新曲「つむじ風」をリリース。歌手活動を引退するわけではない。
〈ステージだって体を労わりながら、機会があれば、また出たいと思っています。今後の活動を聞かれても、私は歌の道をとにかくひたむきに歩いてきたので、これしかできないんですよ。それは約70年前に18歳で北海道を出て、青函連絡船に乗って東京を目指した当時から、ずっと変わらない〉