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「被害少年は私の前でボロボロと涙を流し…」24年前の担当記者が語るジャニーズ性加害問題

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 24年前、『週刊文春』は14週にわたり、ジャニー喜多川氏の性加害についてのキャンペーン報道を行った。当時、記者として取材をしていたのが、ジャーナリストの中村竜太郎氏だ。彼は藤島ジュリー景子社長の説明に「誠意を感じられなかった」と語る。

かつてジャニー喜多川氏の性加害問題を取材していた中村竜太郎氏

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ジュリー氏の発言に「開いた口がふさがらなかった」

 私たちの記事が出た時、ジュリー氏はジャニーズ事務所の取締役でした。もちろん2004年、ジャニー氏の性加害を認めた高裁判決が確定した時もそうです。

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 にもかかわらず、今回彼女は「知らなかった」と語った。何より叔父であるジャニー氏と、母・メリー喜多川氏の2人だけであらゆることが決定され、この件を含めてジュリー氏らは「知ることの出来ない状態が恒常化していました」と述べていたのには、開いた口がふさがりませんでした。

 ジャニーズがジャニー氏のタレント発掘・プロデュース能力と、メリー氏の経営手腕の両輪で発展してきたファミリー企業であるのは確かです。周囲はイエスマンばかりで、彼らを止める人間はいませんでした。

藤島ジュリー景子社長

部下が口を挟める雰囲気ではない“異常性”を持った会社

 例えば10年、私がメリー氏に呼び出され、5時間、記事に対して脅迫的に抗議されたことがありました。その指摘には明らかな事実誤認に基づくものも多かった。女性タレントが在籍した過去について、メリー氏は憤って「いない」と断言。自分が絶対という口ぶりの彼女が「ウチのタレントに女いる?」と側近男性に聞くと、「いません」と即答。部下が口を挟める雰囲気ではなかった。その彼は、現在の副社長の白波瀬傑氏。ジュリー氏が説明した通り、ある種“異常性”を持った会社だと感じました。

 とはいえ、あれだけ週刊文春が報じていて、裁判の結果を知らないわけがありません。その後もジュリー氏は取締役として報酬を貰い続け、社長になります。社会的責任があるのは、論を俟たないでしょう。

99年のキャンペーン当時話題となった記事

 1999年当時、私たちは元ジャニーズJr.の男性たちへの取材を積み重ねました。別の記者は、若い元ジュニアと食事に行ったりして信頼関係を築いた。一方、私の取材相手は自分の友人でした。たまたま少年隊世代以上の元ジュニアに知り合いがいたんです。もちろんいきなり「セクハラされた?」とは聞けません。キャンペーン記事が始まってから、何回も会って雑談し、彼らが話を切り出してくれるのを待ち続けました。