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財務省内では苛烈な「佐川君」

 対照的なのが国税庁長官に出世した佐川宣寿である。財務省の理財局長として、森友学園への国有地売却にまつわる疑惑について、「資料は全て破棄しています」などと国会で答弁し、安倍首相への疑惑追及の盾となる。こうした働きを、首相は「佐川君こそ官僚の鑑」(週刊ポスト3月2日号)と賞賛する。

 文春最新号のトップ記事「佐川国税庁長官を緊急査察する」は、そんな佐川長官の生いたちや財務官僚としての仕事ぶり、競売で手に入れた土地などを詳らかにしている。

佐川くん、ハイ! ©時事通信社

 佐川長官は「腰が低い官僚。頭の良さをひけらかすこともない」(財務副大臣経験者・談)好人物との評判がある一方で、財務省内では苛烈な人あたりで知られるようだ。

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「とにかくよく怒鳴る」、「部下が用意した大臣の答弁書をハサミでバラバラにして作り直させた」といった省内からの悪評が紹介され、「財務省恐竜番付」には東前頭四枚目に登場していた。これは財務省内のパワハラ番付というべき代物で、「おそらくは若手官僚たちが、酒場などで嫌いな上司を挙げて作ったものでしょう」と経済ジャーナリスト・岸宣仁は語る。

 ちなみに昨年の週刊新潮(7月20日号)では、そのパワハラ番付には「片山さつき参院議員なんて、主計官時代から前頭筆頭に名前が挙がっており、退官後も〈おかみさん〉として掲載」されていたという笑い話が紹介されている。

片山さつき ©文藝春秋

 その佐川長官、殊勝にも「行政文書・情報の管理の徹底に特段の配意」と訓示したり、「書類管理を徹底するように」とメールするなど、職員に公文書管理の徹底を部下に命じているという。なるほど安倍首相が「官僚の鑑」というだけのことはある(褒め殺し)。

 また無事に国税庁長官の任期をやり過ごせば、その後は8億円を稼げるとも言われる「優雅な“天下りライフ”」が待っている。それを手助けするかのように「官邸から自民党国対に『絶対に守れ』との指示が伝えられている」(週刊ポスト前掲号)という。

 文春の記事では、『徴税権力』などの著書がある落合博実が、1993年に時の実質的な最高権力者・金丸信を脱税で摘発するのに、当時の国税庁長官・土田正顕がGOを出したことを例にあげ、「政権に忖度し続けた佐川氏にそうした決断が可能なのか」と問う。

戦う公正取引委員会

 そういえば、これまた国税庁長官だった竹島一彦はその後、公正取引委員会の委員長となり、それまで「吠えない番犬」と揶揄されていた同委を「戦う公取委」に変貌させる。後任となる現在の公取委トップ・杉本和行(元財務省事務次官)もこの路線を強く打ち出し、ゼネコン談合を摘発するなど活躍中である。自民党のスポンサーともいえる財界に煙たがられようとも、だ。

杉本和行・元財務次官、現公正取引委員会委員長(右) ©共同通信社

 佐川長官は「歴代最低の国税庁長官」の呼び声もあるが、権力者にとっては腰が低くて気が利いて「最高」かもしれない。先々、「吠えない番犬」としての活躍が期待される。