“上岡らしさ”に溢れている『土佐のいごっそう』
一方で家庭に帰ると息子の龍太郎を溺愛していたという。長じて息子が漫才師になったときには、こう言って手放しで喜んだ。
「弁護士なんか見てみい。毎日つらい、悲しい、苦しい、だました、盗んだ、殺された、こんな事ばっかり言うとるんや。それに比べてお前らは楽しい、面白い、明るい、愉快な、笑い、それをテーマにしゃべっとる。同じ言葉が商売でも、漫才師の方がずーっと上や」
そんな父を上岡は尊敬し続けた。人気絶頂期の1993年と94年に父の故郷である高知県土佐清水市で開かれた講演会の演題は「いごっそう為さん」。また、自身の独演会でも、「俺ら天下の為さんだいッ」と題する父の一代記を講談仕立てにして披露している。
中村によれば、その歌詞が記された原稿用紙は、“上岡らしさ”に溢れていた。
「歌詞にはいくつも土佐弁が出てくるのですが、上岡さんは一つ一つ、説明書きを加えてくれているんです。普通、作詞家さんは『はい、わかるやろ』って、渡してくるだけなのに。それを懇切丁寧に全部説明してくださるのは、上岡さんらしいと思いました」(中村)
中村の頭の中にメロディーは浮かんできているものの、いまだレコーディングには至っていない“幻の楽曲”なのだという。
“話芸の天才”が残した最後の仕事が、披露される日を待ちたい――。
6月7日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および6月8日(木)発売の「週刊文春」では、「探偵!ナイトスクープ」で探偵をつとめた桂小枝、長原成樹らが明かす知られざる秘話のほか、島田紳助がかつて小誌に語っていた上岡の引退理由などを詳報している。
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