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 猿谷を慕うあまり、清を目の敵にして暴挙に走る猿空(石川修平)、ゲイに密かな人気のナルシスト力士・猿岳(小林圭)、ワガママだが我が道をゆく清に感化されていく高橋(めっちゃ)と石原(菊池宇晃)。元力士や経験者も多いが、役作りで増量した役者もいると聞く。地上波ドラマと違って、妥協も忖度もしないキャスティング。こういうところが、作品に説得力と迫力を与えるんだよねとしみじみ。

 この弱小部屋を仕切る、元大関の猿将親方を演じるのが、久々のピエール瀧。元野球選手や元力士という役に1ミリの違和感もないし、元受刑者や元ヤクザでもしっくり。なんもしゃべらずに鮨屋で鮨を握っていても妙に納得がいくのだから、まあ、幅が広い役者である。

ピエール瀧さんや各俳優の説得力のある演技も見どころ(画像:Netflix公式Twitterより)

 そして、清を支える清水を演じたのが染谷将太。素質はあるのに斜に構えた清をなだめすかして励まし、応援し続けるよき友だ。彼の存在が「友情」というピースとなり、「努力」「勝利」とともに、この作品の「週刊少年ジャンプ」的要素を満たした感がある。

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主人公のサポート役清水を演じた染谷将太さん(画像:Netflix公式Twitterより)

 猿将部屋以外のキャストも、まあ本格派というかクセが強いというか。「え、松尾スズキが元力士!?」と一瞬首をかしげたものの、演じる犬嶋親方の器の小ささと性格の悪さを考えれば、このうえなく適役(細かい顔芸がツボ)。すべてのキャストに触れたいのだが、割愛。逆に、気になる点も触れていこう。

理由3:女性がとことんあざとく描かれるのがすごい

 女性キャストを見ていく。アメリカ育ちで女性蔑視に剝き出しの敵意をもつ新聞記者・国嶋飛鳥(忽那汐里)。

ヒロイン役の忽那汐里さん(画像:Netflix公式Twitterより)

 ヒロインだが、強気と勝気の方向性が迷子気味。もとは政治部記者で、政治家に斬り込み過ぎて相撲番に左遷された経緯がある。ただでさえ虐げられている女性記者が、取材対象への敬意も払わずに目をひんむいて噛みついたりはしないって。しかも政治部エースと不倫した設定で、賢いんだか浅はかなんだかようわからない女に(私の友人の女性記者が描き方に激怒していた)。

 次第に、清の破天荒なスタイルに魅了されていくサポーター的存在なのだが、いかにも「わきまえない女」に仕立てあげた装置感が否めず。

 その他の女性の登場人物は、ひとり残らず邪というか、曲者というか、わかりやすくあざとい存在だ。清が惚れこむ巨乳ホステス・七海(寺本莉緒)は「手癖も男癖も悪い女」、清の母(余貴美子)に至っては「男狂いで息子にたかる最凶のズベ公」として描かれている。

主人公・清の母親役の余貴美子さん(写真左)、と父親役のきたろうさん(画像:Netflix公式Twitterより)

 すごいんだよ、余貴美子が。最近では政治家やCEOなど重鎮の役が多いが、このどうしようもないズベ母っぷりには懐かしさを覚えた。さらには、名門・龍谷部屋の女将(仙道敦子)も、猿将部屋の女将(小雪)ですらも、ある意味で腹黒い策士として描かれ、決して清廉潔白な女ではない。清々しいくらいに、女がいちいち邪悪な存在に。恨みでもあんのか、というくらい。