見るべき理由1:主演の一ノ瀬ワタルがすごい
まずはなんといっても、主演の一ノ瀬ワタルだ。「ガタイの良さ+コワモテ=わかりやすく悪役」が多かったし、今回の役もまあまあのごんたくれ(乱暴者)である。ただし、メンチきってないときに見せる可愛らしさは「純朴」そのもの。
『フリンジマン』(テレ東系・2017年)で演じたタツヤは、極悪人に見えるが実は真面目。虚弱体質を脱するために肉体改造をした設定だ。整形する資金を稼ぐために故郷を捨て、セクシービデオに出演した元カノ(筧美和子)を心配して追ってきたと言う役どころ。また、純朴を通り越していろいろ足りない男子を演じた『獣になれない私たち』(日テレ系・2018年)も、愛嬌と天然ボケを前面に出した当たり役だった。
そんなワタルが魅せるわけですよ、凶暴と純朴の両面を。
金のためだけに角界入りし、親方や先輩への礼儀も言葉遣いもなっていない、不躾極まりない主人公・小瀬清(のちに四股名・猿桜)。ただただ凶暴で粗野に見えるが、元鮨職人の父(きたろう)への思いは密かに濃くて強い。父が餞別にくれた5000円札を大事に持っているところなんか、名作『北の国から』を思い出しちゃったよね。
金が原因で両親が不仲になり、やりきれない怒りや絶望を暴力で表現するしかなかった清だが、「裏表のなさ」「素直さ」で周囲の人間を次第に魅了し、自身も相撲の楽しさや技術を体得する喜びを感じていく。忖度や迎合をせず、権威にこびへつらうこともない清の姿に、胸がすく思いを何度もした。1話と最終話で体がまったく違う(力士の体になっている)ところも地味に驚いた。元格闘家で体のコントロールが不得手ではないにせよ、相当の時間と労力を注いだことがわかる。
理由2:元力士や相撲経験者、役者陣がすごい
生意気でどうしようもない清に手を焼くのが、猿将部屋の皆さん。ケガに悩まされている悲運の古株力士で、人格者の猿谷(澤田賢澄)。引退を決意して、酒を飲む場面には泣かされた。
風格のある先輩力士に説得力十分、本作が俳優デビューと知って驚いた次第。また、清をいびり倒し、えげつない嫌がらせをする兄弟子・猿河(義江和也)なんか、とにかく顔も仕草も胸毛も割り箸もアロンアルファも、何もかもが憎たらしくて、なおかつ面白かった。グッジョブ、猿河!