準決勝の日本対韓国戦。カーリングの魅力がぎっしり詰まった「傑作」だった。
第10エンド、そして延長のエキストラ・エンドともに日本は不利な先攻ながら、スキップ藤澤五月は打てる手はすべて打ち、韓国にプレッシャーをかけた。
あとは祈るのみ——という状況に持っていったが、勝利を決めた韓国のドローショットは見事だった。
仕方がない。でも、悔しい敗戦だ。
見逃してはいけない「ストーリー性」
カーリングは、2006年のトリノ・オリンピック以来、4年ごとに必ず話題にのぼるようになった「マイナー競技のなかのメジャー」であるが、なぜ、人気を博すようになるのか秘密がある。
チームのストーリー性だ。
冬のオリンピックでは夏に比べて団体競技が少なく、チームの成長が見える競技がわずかだ。
ところがカーリングでは、1試合2時間半かかるうえに、9試合も戦う「ラウンドロビン」(日本でいうところの「予選リーグ」)の中で、必ずといっていいほどチームのストーリーや、選手のキャラクターが浮かび上がってくる。
感情の浮き沈み。体調の変化。選手たちのコミュニケーション。
今回、日本の女子チームには「そだね〜」や「おやつタイム」に代表されるように、SNS時代に合致したサイドストーリーが話題になっているが、あくまで本筋はチームの「物語」にあり、そこを見逃してはいけない。
日本はラウンドロビンで、韓国に唯一の土をつけ、スウェーデンには相手のミスを誘発させ、勝利を手にした。決勝に進んだ2チームにも勝ったのである。
一方で、プレッシャーのかかるラウンドロビン最終戦のスイス戦では、自滅気味。敗れて相手のスイスの選手に慰められ、その後にアメリカが負けて準決勝進出が決まるというジェットコースター状態。
そして準決勝では、弱点である「ナイーブさ」が出てしまった。
「しっかりして!」と年長のふたりを叱咤
第10エンド、韓国のラストストーンが日本の石を弾き出そうとしたが、ヒットの角度が浅く、日本と韓国のストーンが動き出した。
近くに残った方が1点を取る。
カーリングでは、センターを横切る「Tライン」を超えたなら、相手の石をスウィープしても構わない。ところが、藤澤と吉田知那美のふたりは固まってしまい、動けなかった。
負けた、とセルフジャッジしてしまっていたのだ。
結果的には日本がナンバーワンを獲得したが、土壇場でナイーブさがのぞくあたり、まだ若いのだ(カーラーのピークは30代後半と言われている)。
それでもその場面で、吉田の妹でリードの吉田夕梨花が、「しっかりして!」と年長のふたりを叱咤したというから、このあたりも日本の良さだ。