「悪夢の逆転負け」を乗り越えて
さて、閑話休題。5月24日、神宮球場、対阪神タイガース戦。
1点リードで迎えた9回表2アウト。ノイジーの放った打球を見て、誰もがゲームセットと思った次の瞬間。照明と重なってボールを見失った並木が、まさかの後逸。
悪夢の逆転負けとなり、結果として連敗を止められなかったあの試合。
「何とかしてやろうという気持ち、顔に当ててでもという気持ちはなかった」と試合後、髙津臣吾監督は苦言を呈しましたが、翌25日のスタメンに並木を1番で起用しました。
しかし、結果は3タコ。その翌日から、彼がスターティングメンバーに名を連ねる事はありませんでした。
1か月後の6月23日、バンテリンドームでの中日戦。あの3タコ以来、ようやく巡ってきたスタメンのチャンス。
1打席目は、小笠原慎之介の前に見逃し三振。そして、2打席目。
初球、セーフティーバントの構えを見せるもストライク。2球目、小笠原のナックルカーブに全くタイミングが合わず空振り。
やっぱりダメか……と僕だけでなく、あの試合を見ていた結構な数のスワローズファンは同じことを思ったんじゃないかと思います。
しかし、1-2で迎えた4球目。ストレートを捉えた打球は左中間の真ん中を破りました。ナイス二塁打!
と思ったのも束の間、彼は驚くべき速さで三塁に到達していました。
村上宗隆のタイムリーで先制のホームを踏むと、続く3打席目には意表を突く一塁側へのセーフティーバント。あのバントでセーフになるのは、プロ野球界でも間違いなく並木ただ一人だと思います。
50メートル走5秒32。「サニブラウンに勝った男に勝った男」
独協大時代には、大学日本代表の合宿で1歩目を踏み出してから計測を開始する変則的な50メートル走で5秒32をマークした並木秀尊。
中学時代に陸上大会で「サニブラウンに勝った男」として知られる日本ハムの五十幡亮汰のタイムが5秒42。並木秀尊は「サニブラウンに勝った男に勝った男」なんです。
見ていて思うのは、足の回転の異常なまでの速さ。そう、彼は足が速いだけでなく、回転が早いんです。
特に、「行く!」と決めた時のあの回転の速さ。
何度もリプレイしたくなるあのスピード感は、誰にも真似することはできない。
陸上選手にも負けないこの脚力こそ、真のヒーローになれる足の速さなんです。
スタメンに名を刻み続けろ
この試合を猛打賞とすると、そこから今日までスタメンに名を連ね6月30日現在、4試合連続安打中。
このままレギュラーを掴み取るためにも、とにかく“ちょんぼ”はなくしてほしい。
外野の後逸は即失点に繋がります。実際、足が速いがゆえに打球に追いついてしまうから、捕球できなかった時にミスに見えることもあるでしょう。だからこそ、打球によって勝負に行くのか行かないのか、そういう【状況判断】のセンスを磨いてほしい。
もちろん、打撃においても。長打を狙っていいのか、セーフティーバントもありなのか、右打ちするべきか、ここはヒットじゃなくてボテボテの内野ゴロでもゲッツーはないから1点入る……など。
【状況判断】という能力は、並木秀尊のようなタイプの選手にはとくに求められると思います。
その能力が開眼した時には、獨協大初のプロ野球選手がスワローズの真のヒーローになっていることでしょう。
どうかこのままレギュラーを掴みとってください。
勝手ながら彼の姿を自分に重ねてしまっている僕。
どうか、僕が果たせなかった夢を叶えた姿を見せてください。
自分の殻を破れ、並木!!!
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