山口 僕も泰風もこれまで実録ものといったたくさんの任侠作品に出てきましたが、実際のアウトローの世界で行われる「襲名」や「兄弟盃」といった映像を見て、俳優として所作を勉強してきたんですね。あと、実際のヤクザがどんな間合いで喋るのかとか、そういう雰囲気を掴みたかったんです。美術部の人も、セットを作るのに資料がいりますしね。
本宮 ただ、92年に暴対法が施行されて極道や任侠が世間から消えていく中で、生身の彼らの姿を知る人がほとんどいない状況が生まれていて。そんな中で、誰も知らない任侠の世界のリアリティを追求するよりかは、そこはある種のファンタジーと割り切って、独自の作品を作っていけばいいのかなと思ったんです。
山口 二人とも、基礎的な部分は押さえて勉強してきているから、そのベースがありつつ、オリジナルのエンタメ作品を作っていこう、ということですかね。
本宮 究極、お子さんにも楽しんで欲しいので、「直参」「芋を引く」みたいな業界用語も極力使わないようにしていますし、「カチコミ前にいい女を抱く」みたいな、Vシネのお約束になっていたエロスもやめました。
『日本統一』は「オイコラぁ」だけじゃない
――かつての任侠作品とは一線を画しながらも、“任侠女子”を生み出すほど幅広い世代にまで人気を獲得できたのはなぜでしょう。
山口 僕の考えでは“任侠道”って、「男が惚れる男」というものがある気がしていて。だから、僕が演じる田村にしろ、泰風演じる氷室にしろ、「こういう男の人ってカッコいいよね」って憧れてもらえるように演じているところはありますね。
本宮 僕の理想は氷室と田村が一体になった人物なんです。誰かのためにぐっとこらえて知略をめぐらす冷静な氷室と、「コイツぶっ飛ばしてえな」って思ってぶっ飛ばしちゃう熱い田村。自分の中にも、そんな二面性がある気がしますね。
山口 この作品は「オイコラぁ」だけじゃないのも特徴だよね(笑)。
本宮 そうそう。抗争が主眼じゃなくて、メインは人間ドラマ。氷室のような中間管理職の悩みは任侠の世界だけのものじゃないですから、誰もが共感できるんです。
――お二人は『日本統一』が始まってから多くの時間を一緒に過ごされているのでは。
本宮 一緒にいる時間は家族より長いですね。
山口 スタッフともファミリー感がありますね。そしてこんなに長く一緒にいるのに、正月も泰風の家で過ごしてるし、僕の葬式の喪主も、泰風にすでにお願いしています(笑)。
本宮 正直、こんなに気を遣わない相手はいないし、演技もあうんの呼吸でできるから、リハも必要なくて。そんな息のあった演技も見てもらえたら嬉しいですね。
撮影 佐藤亘/文藝春秋
現在配信中の「週刊文春 電子版」では、主演の本宮泰風さんと山口祥行さんの撮り下ろしグラビアや最新作撮影中の密着取材カット、『日本統一』の躍進を2人が振り返る特別インタビュー、さらには「誰でも3分でわかる!『日本統一』トリビア」など、『日本統一』特集記事をすべて読むことができる。
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