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マラソンランナー必読 「膝の故障」の原因と対策

気をつけたい“上下動の大きい走り方”

2018/02/27
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痛みの元は“靭帯の炎症”が多い

 マラソンによって起きる膝の故障について、桑沢医師に解説してもらう。

「大腿骨と脛骨の間(関節の間)には軟骨があり、この軟骨は一度擦り減ると再生しません。そのため、走り過ぎたことで軟骨が擦り減って痛くなる――と考える人もいますが、実際には違います。走ることで起きる膝の痛みの大半が“ランナー膝”か“ジャンパー膝”。痛みの元は“靭帯の炎症”が多いです」

 ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、膝の外側で関節を支える腸脛靭帯が、大腿骨の外側にある大腿骨外側上顎という突起に擦れる刺激による炎症。この摩擦は膝を曲げ伸ばしするたびに起きる現象だが、桑沢医師によると、スピードランナーは着地時に膝があまり曲がらないので擦れにくく、逆にゆっくり走る人や、足を後ろに蹴り上げる人ほど起きやすいという。

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ランニングコースとしても人気の高い皇居周辺 ©文藝春秋

 また、膝の外側の骨と靭帯が擦れて起きる症状なので、O脚の人はそれだけでハイリスクとなる。

 一方、ジャンパー膝の正式な疾患名は「膝蓋靭帯炎」。膝蓋靭帯とは、膝蓋(膝のお皿)を覆うようにして太腿と脛の骨をつなぐ靭帯。膝に度重なる衝撃が加わると、この靭帯に炎症が起きて痛みが出て、それが治る過程で硬くなり、腿の筋肉に引っ張られてまた痛む。バレーボールやバスケットボールなど「ジャンプ」をともなう競技の選手によく見られる故障だが、ピョンピョン飛び跳ねる走り方のランナーは要注意だ。

膝に痛みが出たときの処置法「RICE」とは?

 ランナー膝もジャンパー膝も、オーバーユースが原因。痛みが出たときに覚えておきたいのは「RICE」と呼ばれる4つの処置法だ。

【R】rest/休む
→痛みがある間はとにかく休むこと。痛みが引いた後も、炎症や拘縮が残っていることがあり、その段階で無理な負荷をかけると、慢性化したり重症化したりすることもある。いきなり本気で走るのではなく、様子を見ながら徐々に距離を伸ばしていく。

【I】icing/冷やす
→「冷たい湿布を貼ればいいのか」と考えるのは正確ではない。湿布には鎮痛作用はあるが冷やしたり温めたりする効果はほぼない。痛み止めとして湿布を貼るのは構わないが、それ以上に大切なのは、氷水や保冷剤を使って冷やすこと。ただし、凍傷には気を付けて。

【C】compression/圧迫する
→腫れを防ぐために行うもので、保冷剤を患部に当てて包帯でグルグル巻きにすれば「I」と「C」を同時にできる。ただし、あまり強く締め上げると血行が悪くなるので、初めは医療機関で看護師や理学療法士にやってもらったほうがいいかもしれない。

【E】=elevation/挙上する
→患部を心臓より高い位置に挙げておくことで、内出血などを防ぐ効果がある。昔はドラマやコントなどに出てくる「交通事故に遭った患者」は、たいてい病院のベッドで片足を持ち上げた格好で寝ていたものだが、あれと同じだ。吊り下げる必要はないので、畳んだ布団などの上に足を載せて寝るだけでもいい。