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 それでも『カンゾー先生』からの10年間だけでも40本近い作品に出演している。そのなかには、田口トモロヲの『アイデン&ティティ』(2003年)、紀里谷和明の『CASSHERN』(2004年)、宮藤官九郎の『真夜中の弥次さん喜多さん』(2005年)など、新人監督の作品も多い。

 麻生の初主演映画となった『ひまわり』(2000年)の監督・行定勲も、当時デビューまもなかった。彼女はこのとき初めて芝居が面白いと思ったという。のちに振り返って、《あのとき、なんだかパッと視界が開けたんですね。今まではただ与えられた台詞を言っていたけど、そこに自分がやっと追い付いてきたような気がして。「生きだした」というか、「演じること」が命を持った瞬間。そんな感じがしました》と語っている(『Quick Japan』Vol.83、2009年)。

『ひまわり』(2000年)

『ひまわり』では初めておとなしい女性を演じたことも麻生には新鮮だった。以後、陰があったり死と直面したりする女性の役が増える。こうの史代のコミックを映画化した『夕凪の街 桜の国』(佐々部清監督、2007年)では、広島で被爆した女性を演じている。

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出演をためらった『時効警察』

 こうしたイメージがついていたころ、まったく毛色の異なる、シュールなギャグ満載の深夜ドラマ『時効警察』(テレビ朝日系、2006年)への出演オファーを受ける。これに対し彼女は《今までやったことのないコメディで、しかもテレビドラマなのがすごく不安で、出演するかどうかは相当悩みました。共演者と監督がすごく魅力的な方々だったから依頼が来たのはすごく嬉しかったけど、私これ断るかも? っていう気持ちもよぎった》という(『SWITCH』2008年6月号)。

『時効警察 DVD-BOX』

 だが、彼女のなかでは、いままで築いてきたものが確立したタイミングを見計らって、一回壊してみたいと考えていたところでもあった。『時効警察』はまさにそう思わせる作品であり、悩んだ末に出演を決める。

 同作は、オダギリジョー演じる警官が、時効を迎えた事件の謎を趣味で解いていくという内容で、麻生はそんな彼と行動をともにしながら、ひそかに恋心を抱き、こじらせている交通課の警官という役どころだった。この役を通じて彼女はコメディエンヌの才能を開花させる。ドラマ自体もカルト的な人気を集め、続編もつくられた。