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トマ・ピケティが分析した“正確なジェンダー格差”「賃金格差よりも問題なのは…」

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女性は購買力をほとんど持たず、お金の流れから取り残された

 フランスでは、現在女性の労働所得が全体に占める比率は35%である(したがって男性が65%になる)。この比率は1970年には20%だった。つまり、現在の南アジア、インド、中東とたいして変わらなかったわけである。

自然、文化、そして不平等――国際比較と歴史の視点から

 比率がこの程度の場合、女性は購買力をほとんど持たず、お金の流れから取り残されたも同然になる。だからフランスはこの点でだいぶ進歩したとは言えるが、だからと言ってそれを過大に考えるべきではない。

 家父長制度的な経済システムは資本主義の発展と密接に結びついており、そこからの脱却はようやく始まったばかりだ。とは言え、この脱却の度合いにも国や地域によって大きなちがいがみられることは興味深い。このちがいも社会、歴史、政治のプロセスと深い関係がある。

Thomas Piketty
1971年、フランスのクリシーに生まれる。パリ経済学校経済学教授。社会科学高等研究院(EHESS)経済学教授。EHESS とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)にて博士号を取得後、マサチューセッツ工科大学(MIT)で教える。2000 年からEHESS 教授、2007 年からパリ経済学校教授。2013 年に刊行された『21 世紀の資本』が世界的ベストセラーに。「経済的な不平等」をとくに歴史比較の観点から研究し、上位1%への富の集中を批判した2011年のウォール街占拠運動に影響を与える。世界不平等研究所および世界不平等データベースの共同ディレクターも務める。

自然、文化、そして不平等 ―― 国際比較と歴史の視点から

自然、文化、そして不平等 ―― 国際比較と歴史の視点から

トマ・ピケティ ,村井 章子

文藝春秋

2023年7月11日 発売

トマ・ピケティが分析した“正確なジェンダー格差”「賃金格差よりも問題なのは…」

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