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暴力団関係者があぶく銭をそそぎ込んだという声は意外にも…

 スポーツ紙やネットだけではない。一般紙でも2億円を当てた中年男性は話題の人になっていた。7月5日の『朝日新聞』社会面には、「常道外れた競馬の『神』」というタイトルの、8段組の大きな記事が載った。インターネットの掲示板の書きこみについて取りあげ、〈「暴力団関係者があぶく銭をそそぎ込んだ」と推測する声は不思議と少ない〉などと朝日らしい書きかたをする一方で、JRA職員のこんな話も紹介している。

2003年7月5日付き朝日新聞朝刊社会面

〈1千万円単位で買う客は「決して特異ではない」と話す。バブル景気のころには一度に3千万円をはる豪胆な客も見た。「そのときは外れていましたが」〉

 そういう客は無表情で淡々と買っているそうだが、場外発売所や競馬場の現場で仕事をしてきたJRAの職員は驚くような馬券師を見てきたことだろう。

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 わたしも一度だけ、そういう馬券を買っている人物に遭遇したことがある。バブル華やかなりしころの東京競馬場、ある重賞の日だった。インターネット投票はもちろん、マークシートも導入されていない時代の窓口は混雑していた。そのなかで、客がひとりしかいない窓口を見つけて並んだのだが、前の男性はいつになっても買い終わらない。肩越しから覗いてみると――当時の窓口は客に見えやすいように買い目が表示されていた――そのころ話題になっていたオーナーが所有する馬2頭の、連複一点買いだった。ああ、そういうことか……。状況を察したわたしは、べつの窓口に並び直した。

 結果は、1頭が勝ち、もう1頭は惨敗だった。なんとなく安堵したわたしはしかし、惨敗した馬から買っていた。それにしてもあの男性はいくら買ったんだろう。

「2億円を当てたオッサン勝負師」を大追跡!

「ミラクルおじさん」をめぐる騒動はつづく。

『週刊ポスト』2003年7月15日号

『週刊ポスト』(03年7月18日号)には「『2億円を当てたオッサン勝負師』を大追跡!」という記事がある。7月2日の早朝、「競馬関係者」からポスト編集部にひとつの情報がもたらされる。7月1日の午後2時ごろ、都内の繁華街にあるウインズに2億円を当てた本人という男性から「あす、そちらに払い戻しに行きたい」と電話があった。男性は冷静で、話しぶりも紳士的だったことからJRAも本人と判断し、払い戻しに備えている――。そんな情報だったという。ポスト誌の取材班はすぐにそのウインズに向かい、張り込みをつづけたが、それらしき人物は現れなかった。