内廷皇族と内廷外皇族
前天皇の退位が決まった時期のこと、皇位継承順位第一位となる秋篠宮の称号が今の「皇嗣」ではなく「皇太弟(こうたいてい)」となるのかと騒がれ出した。
彼は現状維持を望んでいたという。自分の立場も宮家のまま、内廷(ないてい)外皇族のままでいいと願っていた。「皇太弟」というのは天皇の弟で、皇位を継承すべき人のことだ。
私は、宮内庁関係者に「皇嗣と皇太弟の違いがよくわかりません。どうして、殿下は皇太弟にならなかったのですか」と聞いてみたことがある。
「皇太弟になると内廷皇族になるわけでしょう。秋篠宮家は30年以上も独立した宮家として続いていて、国民に親しまれ、国民の間に定着しているわけですから、それをいきなり、内廷皇族にすると言われても、それはちょっと、宮さまは困るのではないかと思いますね」
皇室には、内廷皇族と内廷外皇族という区別がある。多くの国民にはなじみの薄い言葉かもしれない。しかし、皇室の内情を考える上では大切な言葉だ。
内廷とは天皇とその家族の私的な生活の場を指し、内廷皇族は現在、天皇、皇后、敬宮愛子内親王と上皇、上皇后の5人となる。その他の宮家として独立している秋篠宮家や常陸宮家、三笠宮家、高円宮家などの人たちは内廷外皇族と位置付けられる。
違いは何か。内廷皇族には、私的な費用として国から内廷費が支出される。内廷外皇族には皇族費が支出されるが、その金額が違う。内廷費の方が多いのだ。
世話をする職員の人数や警備体制も、内廷皇族のほうが内廷外皇族より人数は多いし警備も厳重だ。さらに内廷皇族はより行動の自由が制限されることが多いように思う。
いや、単純にそうとも言い切れないかもしれない。秋篠宮は内廷皇族時代でも兄や妹より自由に行動していた。個人の裁量が影響することも少なくない。
上皇と上皇后の次男として生まれた彼は結婚までは内廷皇族として暮らしてきた。