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秋篠宮家創立時は10人以下の職員

 1990年の結婚に伴って、秋篠宮家が創立されて内廷外皇族となった。結婚当時の秋篠宮邸は、御仮寓所付近にあり、今よりずっとこぢんまりしていた。住居と事務棟は屋根付きの渡り廊下でつながっていた。事務室は狭く、職員の机に彼が座っていて驚いたこともあった。当時の職員は10人以下だったと記憶している。

 彼は内廷皇族と内廷外皇族の違い、両者の長所と短所を肌で知っている。生まれてからずっと内廷皇族として過ごしている兄とは異なる点だ。

 また、彼は生まれながらに内廷外皇族として過ごしている皇族とも違う。その意味でも、秋篠宮の立ち位置はとてもユニークだ。

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英チャールズ国王とご歓談(英政府提供)

 そんな彼にしか指摘できない提言は、たくさんあるように思う。

 だが、彼は常々、「抱負や決意、期待などは、外に向かって発信しません」と話している。また、誕生日の記者会見でも「抱負ということは、語ることは、口に出して言うことはありません」と控えめに語る。本心はどうだろう。

 ある日、平成皇室の特徴は、戦没者への慰霊、被災地へのお見舞いにあるのではないかと話したところ、彼から次のような趣旨の回答があった。

「慰霊、お見舞い、両方とも大切なことです。ただ、これを平成皇室の特徴としてしまうことでよいのでしょうか。それ以外のキーワードも存在すると思います。海外の訪問にしても、平成は昭和とは格段に異なります。国内の地方公務についても、人々との距離ははるかに近くなったと思います。それらを総合的に見ないと、特徴は分からないような気がいたします」

 平成と昭和では、慰霊やお見舞いに関する移動時間や手段が大きく異なることを踏まえて彼は発言している。皇族の側からの視点が新鮮だ。

チャールズ英国王の戴冠式に参列するため、政府専用機に乗り込まれる秋篠宮ご夫妻 ©時事通信社

 彼と対話を重ねれば重ねるほど、彼について世間の印象と実像との間にギャップがあることに気づかされる。洞察力に富み、深く考え慎重に行動する人だ。そして、謙虚だ。

 今はやれること、やらなければならないことを、様々な枠組みで考えを深めているに違いない。できれば、新しいことに挑戦したいという思いも当然あるのだと私は確信している。

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