6月29日、秋篠宮ご夫妻は結婚33周年を迎えられた。ジャーナリストの江森敬治氏による『秋篠宮』(小学館)から、秋篠宮さまが語られた皇嗣殿下としての心構えや決意について、一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/#3から続く)

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どこまでを公的な活動と捉えるか

 どこまでを「公的」と考えるかは皇族個人によって、若干判断が異なるだろう。皇族の中には、自分のやりたいことイコール公的な活動と捉える人もいるかもしれない。彼の場合は公的な活動は受け身で行うものなのだ。

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 そうした大前提の上で、秋篠宮に「取り組みたいテーマはありますか」と問うと、「個人的に関心を持っていることに公的性格が付いたものを考えています」と語ってくれた。

 私は質問を変えてみた。

天皇誕生日の一般参賀で手を振られる秋篠宮ご夫妻と佳子さま ©時事通信社

――令和時代の皇室のあり方について、どのように考えておられますか。

「この問題は、いろいろな角度から試行錯誤をしながら考えを深めていくものかと思います。その一方で、都内や地方を問わず、私がどこかに出掛けて行く場合、極力スリム化をし、また、人々の生活を妨げないようにしていくことは大事なことだと思います」

 シンプルな答えだが、やはり私が求めていたものではなかった。

 自然が豊かな赤坂御用地だけに、秋篠宮と会っていると時々、鳥の声が聞こえてくる。庭で鶏を飼っているため、コケコッコーという鳴き声が響くこともある。

 この時は、カラスの鳴き声が耳に入ってきた。私が質問に詰まってしばし考え込んでいると、カアーカアーと声がした。その鳴き声が、「江森、早く質問しろよ」「おい、大丈夫かい」「いつまで考え込んでいるのだよ」というふうにも聞こえてくるから不思議である。

 結局、この日は、期待した具体的な内容を確認することができなかった。

 私は、御仮寓所をあとにした。外に出ると、どこからともなく、桜の花びらが落ちてきた。しばらく、青山通りに沿った歩道を歩いて、赤坂見附の交差点に出た。

 陽気がいいので、ブラブラと歩くことにした。

 風も心地が良い。焦ることはない。

 じっくり彼の考えを確認していこうと思い直した。