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 このように自民党内の力学を読み切れず、流浪の民となることを余儀なくされていた建一氏が流れ着いたのが維新だった。

「次期衆院選では『自民公認』で『選挙区から立候補』にこだわっていた建一氏だが、なかなか調整がつかず、仕方なく条件の合いそうな維新を受け皿にするような形で出馬する方向に舵を切った」と、維新関係者は声をひそめる。

「新東京3区で自民から出馬する石原宏高氏は現在は岸田派。河村親子を山口から追い出した林氏も岸田派なので、建一氏の選挙戦は山口の敵を江戸で討つような様相を呈することになるだろう」(同前)

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岸田文雄 Ⓒ文藝春秋

松原氏の穴を埋められない立憲、強気な姿勢の共産

 冷や飯を食わされ続けてきた建一氏が岸田派に一矢報いることになるのか――どろどろの政治ドラマが期待される中で、めっきり影のうすい野党第一党である立憲はどうなっているのか。

 もともと旧東京3区は松原氏と石原氏が議席を分け合ってきた。しかし、旧東京3区が小選挙区の区割り変更「10増10減」によって、品川区を中心とする新東京3区と、大田区を含む新東京26区に分断されることが決まると、事態がにわかに動き出した。

 松原氏が「住居を構えて当初から活動している大田区が含まれる26区から出馬したい」と要望したことに対し、立憲の東京都連は「3区から出て、自民の石原氏と戦って欲しい」と主張し、議論は平行線を辿っていた。

我を通して離党した松原仁 Ⓒ文藝春秋

 両者は最後まで折り合わず、ついには松原氏が立憲を離党して新東京26区から無所属で出馬することとなってしまう。つまり新東京3区にめぼしい立憲候補がいなくなってしまったのだ。

 候補者を立てることさえままならない立憲に対し、強気な姿勢に出ているのが共産党だ。たとえば6月12日には、次期衆院選で菅直人元総理のお膝元である東京18区に候補者を擁立すると発表している。

 菅氏は一昨年の衆院選で、旧民主党のときに選挙の手ほどきをした弟子とも言える自民の長島昭久氏と師弟対決を繰り広げ、約6000票差で辛勝している。このとき菅氏は市民連合を介して共産と全面的に共闘していた。薄氷の勝利の原動力こそ共産党だった。

志位和夫 Ⓒ文藝春秋

 それだけに共産の東京18区擁立は驚きをもって受け止められた。立憲都連関係者は「泉健太代表が共産と距離を取り、選挙協力や候補者調整を『やらない』と明言する中、共産はこれまで協力していた地域でも候補者を立てていくというメッセージを発している。都連内ではこうした動きを受けて『共産に5、6個選挙区を譲っても良いのではないか』という意見が出始めている」と明かす。