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2年で10回リピートするほどの人気…ボロボロだった築90年の小学校が「観光客が殺到するホテル」に生まれ変わるまで

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 社会,

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洋と和とをうまくミックスし、京都を感じさせる内装に

「校舎の元の意匠が美しいので、それを活かしてなるべく引き算でつくりました。例えば、廊下の天井には、おびただしい量のダクトや電線を設置しなければなりません。そうすると天井が下がってきて、すごくきれいな元の廊下を台無しにしてしまう。それで、天井に黒いツヤのある板を張って、床の意匠を映り込ませました。下がってくる天井そのものの存在を消したんです。

同じように、客室を仕切る壁は半光沢の白いものにしました。元からの美しい窓や天井の意匠が映り込んで、壁として主張しなくなる。ツヤのある壁って、建築的にはあまり使わないものなんですけどね」

洋と和とをうまくミックスし、京都の歴史や伝統を感じさせる。元からある美しさを活かし、それ以外のものは存在感を消していく。こうした手法は、客室や廊下に限らず、館内のあらゆる場所で用いられた。

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天井が高い大空間の2階レストランは、小学校の講堂だった場所。天井は元のものを再生し、桟が入った大きな窓もそのままの形で再生した。席に着くと、テーブルの天板には、天井の意匠や窓からの光が映り込む。

ライブラリーをイメージして、仕切りのように配置した本棚には、上段は草木染の大きなブックカバーの列。その下には、京都の歴史や伝統の関連書籍が並ぶ。ノスタルジックな照明や家具も配置され、あたかも歴史あるクラシックホテルであるかのような空間になっている。

テーブルや椅子、ベッド周りの家具もオリジナル

さらに、館内の世界観をつくるのに大きな役割を果たしたのは、オリジナルの家具類だ。担当したのは乃村工藝社A.N.D.のデザイナー、佐野香織さんだった。

佐野さんは、他のデザイナーの協力を得ながら、場所ごとのデザインテイストやサイズに合わせて、次々と家具をデザインしていった。その数は、館内すべての家具の7割にも及んだ。

「一般的にホテルでは、耐久性やコストの面から、オリジナル家具を制作することはよく行われます。ただ、今回は、同じ家具をたくさんつくるのではなく、部屋のデザインと形、そしてサイズに合わせて、テーブルや椅子、ナイトテーブル、ベッド周りの家具など、きめ細かくデザインしていきました。