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2年で10回リピートするほどの人気…ボロボロだった築90年の小学校が「観光客が殺到するホテル」に生まれ変わるまで

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 社会,

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デザインで意識したのは、全体的にちょっとノスタルジックな家具というところなのですが、絶妙な曲線をつくるのが難しかったですね。ゲストラウンジにも椅子がいくつか入っていますけど、その椅子も脚の曲線に苦心しました。椅子は、けっこう寸法感が厳しいので、全体的に難しかったです。出来上がったものの、座り心地が納得できなくて脚を切ったり、そもそも予定した場所に収まらなくて、つくり直したこともありました」

図面と実際の寸法が違うトラブルも続出

家具が予定した場所に納まらないのは、寸法を間違えたからではない。古い建物だけに、実際に施工してみたら、図面とは寸法が違うということがいくらでもあったと、乃村工藝社チームの萠拔さんはいう。

「建築図をもらって、それを基に図面を描くんですが、現場に行ったら壁の位置が全然違うとか、いっぱいありましたね。古い壁なので、経年変化で厚くなったりしていたんです。すると納まるはずの家具が入らない。壁が先にあるわけですから、家具をつくり直すしかありません。CADで図面を描くんですけど、実測値ではないので、実際の寸法は違っていることも多いんです。今さらどうする、みたいなタイミングで発覚することが結構ありました」

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もうひとつ、別の苦労があったのは、このホテルのシンボルでもあるルーフトップバーの設置だった。

「最初に来た時、屋上に上がったら、めちゃくちゃ汚かったけど、めちゃくちゃ景色がいい。やはり八坂の塔がすごく近いので、ここをホテルの価値にしない手はないと思いました。僕らが参加した時にはすでにルーフトップバーというアイデアはあって、それを僕らが図面化して具体化していきました」(小坂さん)

みんなが集まるようなシンボルをつくりたかった

しかし、実現には建築法規上、食品衛生法上、近隣対策上のハードルがいくつもあった。NTT都市開発の河野さんが語る。

「天候で営業が左右されないよう、最初は屋根を付ける計画でした。しかし、屋根をつくると建築基準法上の高さ制限を超えてしまう。でも、屋根と壁がないと、食品衛生法上、調理はできない。結局、屋上に、ごく小さな箱型の調理場をつくりました。