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 今思えば、1週間休んだところで長い育児のなかでできることはかぎられているのですが、3人目が生まれる数カ月前の私は、この5日間は極めて現実的に、子どもたちにご飯を食べさせ、お風呂に入れて寝かせ、幼稚園に送り出す大人がわが家にいないことにハタと気づき、そうだちょっと仕事を休もう、と軽く思いついたのです。今回の育児休業の出発点でした。

 その後、いろんな人の意見を聞いたり、会社と相談したりするうちに「1カ月くらいは休もうか」「いや、いっそ3カ月」「そこまで休むなら、上半期の終わりの、キリのいいところまで休ませてもらおうか」と、おおよそ4カ月休ませてもらうことにしたのでした。

 とまあ、育休の取得の経緯そのものも主体性があるようなないような頼りないものでしたし、育休を取ることを決めたあとも、なにから手を付ければいいのか、どんな準備をすればいいのかもわかりません。ほぼ唯一、事前にやったことが、妻にお願いして子どもたちの1週間のスケジュールや持ち物、非常時の連絡先などを、手帳にまとめて書いてもらうことでした。やったこと、というか、やってもらったんですけど。

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 生活をともにしているわけだし、朝、幼稚園に送り届けるのはもともと私の役目なので、持ち物やタイムスケジュールはなんとなくわかっているつもりでした。じっさい、妻が書いてくれたメモを読んでも、そこに人知れぬ驚愕の事実が書かれているわけでもなく、「ふんふん、ああ、なるほど、知ってる知ってる」「ま、これくらいならなんとかなるかな」と、ナメたことを考えていました。

 ところが、事ここに及んで手帳を開いてみると、「なんとなく」わかっているのと「ちゃんと」わかっているのでは全然違いました。子どもの通園バッグひとつとってみても、毎日持たせるものは、曜日指定で持っていくものは、長男と次男はどう違うのか、幼稚園からの連絡は電話なのかメールなのかLINEなのか、お迎えの時間は何時なのか、なにひとつ知らないのです。

 育休初日の夜は、幼稚園に一緒に登園するだけでそこそこ「やってる」つもりだったのが、実は驚くほどごく一部だったことを思い知り、猛烈に恥ずかしくなり、焦り、打ちのめされ、くりかえしくりかえし妻が書いてくれた虎の巻を読み返して、浅い眠りについたのでした。