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「今思うとよくそんなことしてたな」

かをり すぐ仲良くなったよね。当時から数少ないサシで遊ぶ人間でした。でも何をして遊んでいたかは記憶がない。浅草でお寿司を食べたことだけは覚えているけれど。

拓哉 どこかに行くとかではなくて、しゃべってたよね。

かをり 当時から「好きなものや面白いと思うものが一致しているし、同じようなものを見て育ってきたんだろうな」と感じていました。サシで遊んでいたけど、「デート」だとは全然思っていなかったよね。

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拓哉 うん。「予定」だと思ってた。当時から気を遣わなかったので、それが良かったのかな。気を遣っていたら、結婚していなかったかも。

©文藝春秋

かをり なんでもさらけ出していたしね。本を出版するようになる以前の拙い原稿をお互いに見せあって感想を言い合ったりもしていて、今思うとよくそんなことしてたな。恥ずかしすぎるよね。

拓哉 もう絶対にやらん。なんでそんなことができていたのか、わからない。

かをり 当時もらった原稿、まだ持っているよ。

拓哉 やめて。公開しないで(笑)。

かをり 恋愛対象として意識していなかったというのもあったけど、尊敬もしていたので、「私の書いたものに対して適切な意見をくれるだろうし、この人は私の遠い夢をバカにしないだろうな」という信頼もありました。

拓哉 「相談するなら、彼女だな」というのは僕のほうにもありました。

プロポーズの裏側

――そんな親友のような関係のおふたりが、どういう流れで結婚ということに?

かをり ふたりとも長く大学にいたので、卒論の時期と修論の時期が被っていて、つらいタイミングも一緒で、「支え合っていく」というフェーズがすごく増えてきたんですよね。私は怒りっぽいし、「自分は人と一緒に住めるタイプではないな」とずっと思っていたんですけど、彼の場合は、一緒にいてイライラしないし、何があっても許せるだろうなという確信を得ることができたので。あと、一緒にいて楽しかった。

拓哉 そうね。

かをり オタク口上の一種だと思うんですけど、私は友人がちょっといいことをしてくれると、喜びを表すのに、すぐに「わー、結婚しよう」とよく言っていて、それを繰り返していたら本当に結婚することになったのかもしれない(笑)。

©文藝春秋

拓哉 「結婚しよう」っていう鳴き声だったんだよね(笑)。

かをり 鳴き声だった。ひとりでいるときでも、ごはんが上手につくれたときとか「結婚しよう」って自分に対して言っちゃうし。

拓哉 その鳴き声にダマされて(笑)。

かをり 今もその口癖が抜けなくて、夫に「結婚しよう」と言いかけて「結婚し……てよかった!」って言い直したりしてます。あと、私が生まれてから1万日目が近かったこともあったよね。

拓哉 婚姻届を出した2022年7月8日が、彼女の生誕1万日目だったんです。