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 彼らはテストの点数など目に見えるものしか信じようとしない。だから、質より量を地で行く、非効率的な勉強法を強制するのだ。子供たちは連日にわたって深夜、時には明け方まで勉強をさせられるため、朝登校する頃にはフラフラ、といったことも珍しくない。

「ノートに10回ずつ書きなさい!」鬼コーチ化する親たち

 私がフリースクールで出会った中学3年生の男子がいる。彼は深夜の3時くらいまで親につきっきりで勉強をさせられていたそうだ。

 彼は次のような体験を語ってくれた。

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「親は最初から長時間勉強をしろって言うわけじゃないんです。がんばって早くノルマをこなそうねっていう言い方をするんです。でも、解答に間違いを見つけるたびに怒りだして、あれもやれ、これもやれって言いだすんです。大きな声で叱られるんで、僕もパニックになってできるものもできなくなる。そしたら、親はもっと怒ってさらにたくさんやれって言ってくるんです」

 漢字テストで間違いがあったとしよう。最初は間違えた漢字を3回ずつ書かせて再テストするのだが、再び間違えると激怒して「ノートに10回ずつ書きなさい!」と言いだす。それでまた間違えると、今度は「30回ずつ書け!」となる。これでどんどんやることがつみ重なり、勉強時間が増えていくのだ。

 これはスポーツや文化においても当てはまる。野球部の監督が、試合でエラーをした内野手に対して千本ノックをするとか、ホームランを打たれたピッチャーにグランドを100周走らせたりするといったことだ。

 冷静になって考えれば、これほど要領の悪い勉強や練習はない。時間だけでなく、本人が落ち着いた状態で、自分で考えながらやらなければ、定着率が大きく落ちることは科学的にも明らかだ。

 漢字の学習でいえば、いくら子供を怒鳴りつけて100回書かせて覚えさせたとしても、それは短期記憶に留まるだけで、数日もすれば忘れられてしまう。むしろ、日を改めてその漢字の成り立ちを教えたり、意味を考えさせたりする方が長期記憶として定着する。

 彼らが目に見えるものしか信じられないとしても、なぜここまで効率の悪いやり方を強いるのか。それは親が子供のためではなく、自分のために今その瞬間の満足感を求めているからだ。