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教育虐待が引き起こした「奈良県エリート少年自宅放火事件」
後に詳しく見るが、教育虐待が引き起こした有名な事件に「奈良県エリート少年自宅放火事件」がある。医師の父親から教育虐待を受けていた少年が、自宅に放火した2006年の事件だ。
父親は、この少年が幼い頃からつきっきりでスパルタ教育をしてきた。かなり早い段階から少年に暴力をふるっており、計算を間違えた、覚えが悪いなど、あらゆることを理由にして毎日のように殴る蹴るといったことをしていた。
高校1年のある日、少年は父親の監視のもとで数学の問題を解いた。難しかったのだろう、手間取ってなかなか解けなかった。すると、父親はシャープペンシルを取り上げ、あろうことか息子の頭頂部に突き立てたという。
客観的に見れば、父親の一方的な虐待でしかない。少年は100%被害者だ。だが、少年は手間取った自分も悪いと思ったのか、「痛いなぁ」と言っただけだった。父親はそんな息子の言葉には耳を傾けずこう怒鳴りつけた。
「はよせいや!」
この後、少年は反論するのをあきらめ、頭に突き刺さったシャープペンシルを抜いて勉強をつづけたそうだ(草薙厚子『僕はパパを殺すことに決めた』)。
教育虐待で起こる暴力の大半は、このように閉鎖的な親子関係の中で当たり前のようにやり過ごされてしまっている。スポーツにおける体罰も構造は同じだ。だからこそ、親は反省することもなく、どんどん暴力を激化させていくのである。(前編を読む)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。