漢字の練習でいえば、子供に100回書かせて正解を出せるようになったということに満足しており、野球の練習でいえば、千本ノックを通して泥だらけにさせたということに満足しているのだ。子供の定着率をよそに、親が自分のエゴを満たしているだけなのである。

非効率的な指導の数々

 他に、親が子供に対して強いる非効率的な指導としては次のようなものがある。

 ・勉強が終わるまで部屋から出たり、トイレへ行ったりするのを禁じる。
 ・朝の課題が終わるまで学校へ行かせない。
 ・中学受験希望者以外と付き合わせない。
 ・集中できないからとシャッターやカーテンを閉めたままにする。
 ・受験に合格するまでお菓子やジュースを禁じる。
 ・部屋にカメラをつけて勉強しているかどうか監視する。
 ・合格するまで髪を伸ばすことを許さない。
 ・テレビやスポーツなど勉強とは無関係なものをすべて禁じる。
 ・病気や怪我をしている時でさえ、いつもと同じ勉強を強いる。

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 小学生に尿意や発熱を我慢して勉強をさせたり、一方的に坊主頭にさせたりして、勉強がはかどるわけがない。それなのに、親が権力をふりかざして平気でそんなことをさせている時点で、正常な判断能力を欠いていると言わざるをえないだろう。

 親のこうした行為がさらにエスカレーすると、今度は身体的な暴力行為へと結びつく。叩く、蹴る、突き飛ばす、物を投げるといった肉体的に子供を傷つける行為だ。ひどい場合は、煙草の火を押しつける、髪をつかんで引き回す、押し倒して首を絞めるといったことまでする。

 教育虐待が身体的虐待に発展するケースは、親が子供につきっきりで勉強を教えている家庭で起こりやすい。

 親がいたずらに偏差値が高く、高い理想を掲げているので、子供はなかなかそこに到達することができない。親は、なぜ子供ができないのか理解できず、理想と現実のギャップにいら立ち、そのギャップを力ずくで埋めようとする。この時に、感情に任せて暴力をふるうということが起こるのだ。

 教育虐待に伴う暴力で厄介なのは、それが親のしつけという形で完結してしまっている点だ。親は子供のためと言って手を上げ、子供も自分がダメだったから叩かれたと受け止めるので、暴力が正当化されてしまう。