何年ぶりになるだろうか。私が編集長を務めていた月刊ベイスターズで取材をした最後の年から考えると8年。ただ見るというだけなら3年ぶりに、DeNAベイスターズのキャンプ地・宜野湾にやって来た。青い空、海からの強い風、キャンプ地を取り巻く環境は何も変わっていないが、訪れているファンの数が圧倒的に違う。そして、宜野湾市立野球場には『アトムホームスタジアム宜野湾』という真新しい看板が掲げられている。聞くと今年のキャンプインに合わせて命名されたのだとか。大幅に増えたファンの数といい、球場のネーミングライツといい、さまざまな要素はあるだろうが、こんなところにもここ数年のDeNAベイスターズの躍進と、今シーズンへの期待が如実に現れていた。

 2シーズン続けてAクラス入りを果たし、昨シーズンはクライマックスシリーズを勝ち抜いて日本シリーズ進出を果たしたDeNAベイスターズ。その原動力はなんといっても、若い選手たちの台頭だろう。

 DeNAベイスターズになった2012年以降のドラフトで指名し、入団した選手たちの活躍ぶりがチームの躍進に大きく貢献していることは誰もが認めるところだろう。特に14年以降の1位指名の選手、山﨑康、今永、濱口がいずれもルーキーイヤーからチームの主力として、なくてはならない存在になっている。もちろん上位指名選手だけではない。昨シーズンの首位打者・宮﨑や正捕手を争う戸柱と嶺井、さらには倉本、柴田など数え上げればきりがない。もちろん個々の選手に力があったことに間違いはないが、スカウティングの成果も大きいと言えるだろう。

ADVERTISEMENT

ルーキーイヤーに新人最多記録となる32セーブを挙げた山﨑康晃 ©文藝春秋

 宜野湾で懐かしい顔ぶれと再会した。スカウトの面々である。実はこの日からスカウト全員がキャンプ地に集合しているのだとか。もちろん、今秋のドラフト会議に向けたスカウトたちの戦いは始まっており、キャンプ地でもスカウト会議が行われる。その一方で、自らが追い続け、無事に入団させた新人選手たちが、プロ野球人生の第一歩といえるキャンプをどのように過ごしているのかを見届けることも大切な仕事のひとつなのである。そこでスカウトの皆さんに同じ質問をしてみた。

「これだけ獲得した選手が活躍し、チーム力がアップしているとスカウト冥利に尽きるっていうものじゃないんですか?」

「そうですね。これだけ頑張ってくれていると、やっぱりうれしいですね」とは河原スカウト。「1位指名の選手が、毎年毎年活躍してくれるのもうれしいですが、下位指名の選手たちも、何人も一軍で活躍してくれていますからね」と相好を崩した。

「いやいや、一にも二にも選手自身が頑張ったからですよ」と言うのは欠端チーフスカウト。「プロ入り後は、僕らは何もできないですからね。彼らがしっかり努力をして、自分の持っている力を存分に発揮してくれたからですよ」

 そのほかのスカウトも表現の仕方は人それぞれではあったが、みんな本当に嬉しそうであり、またスカウトとしてのやりがいや手ごたえを感じていることが伝わってきた。さらに異口同音に話していたのが、現場スタッフとの連携についてだった。