文春オンライン

「老いは、着実に忍び寄っているわけです」…三浦知良56歳、それでも現役を続ける理由〈来季もポルトガルでプレーへ〉

2023/07/11
note

何千本も何万本も蹴ってきてチャンスは1回

 もっと言えば、僕はこの5、6年、練習が終わったあとに一日も欠かさずPKの練習を3本、ゴールキーパーに手伝ってもらってやってたんです。いつくるかわからないけど、PKの機会が来たら自分で蹴りたいと思っていたから。ポルトガルでもヌーノっていうセカンドキーパーにお願いして毎日やっていた。彼も入れられると悔しがるから、5本とかになることもあるんですけど。でも、そうやって5、6年毎日練習していても、現実にPKがめぐってきたのは、去年の鈴鹿の1回だけだからね。

「ゴールしたと言っても、どうせPKのゴールでしょ」と言った人もいるかもしれないけど、入れるためには、そんなことも毎日やっていた。10年間、公式の試合でのPKはこの1本。与えられたPKはこの1本。それが人生なんです。これだけのものを得るためには、これだけのことをやらないと得られない。PKは僕にとっては人生と同じなんですよ。流れの中で入れた1点となんら変わらない。何千本も何万本も蹴ってきてチャンスは1回。でもまあ、その1本があったからまだよかったんですけど(笑)。

 

チームで「KAZU」ではなく「MIURA」と呼ばれている理由

――「オリヴェイレンセ」では、「KAZU」ではなく、「MIURA」と呼ばれていたそうですね。

ADVERTISEMENT

 チームにブラジルの日系人でアンダー17のブラジル代表にも選ばれた左サイドバックの若い選手がいるんです。彼が13歳のときに、初めてブラジルのクリチーバに行ったとき、老監督に呼ばれて、「お前、名前なんて言うんだと」訊かれ、「クリスチャン・ケンジと言います」と言ったら、突然、「お前は、今日からカズだ」って言われて、「日本から来たカズという左ウイングの選手がいて、活躍して」と僕の話をいろいろと聞かされたらしい。で、クリスチャンは、その日から、登録名がカズになったという(笑)。

 そのクリスチャンが僕のところへ来て、「コリチーバにいたときからあなたに憧れていて、いつか会いたいと思ってた。で、会えたのがこのポルトガルという場所で、それもこのオリヴェイレンセというチームでまさか一緒にやることになるなんて考えてもみなかった。サッカーっていうのはすごいスポーツですね」って言う。で、「カズを名乗るのを自分はもうヤメますから」って言われたから、「いや、お前がここではカズを引き継げ、俺はミウラでいいから」って言ってね。それで僕はミウラになったんです。練習中に「カズ!」って言われるとまだどうしても反応しちゃうんですけど(笑)。彼がリーグ戦で1点入れたときに、カズダンスをやったのもそんなわけだったんです。僕が入れたら一緒にやろうと言ってたんだけど、その機会は現われず、でしたけど。