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乳がん経験者のための人工乳房 製作スタッフが語る「ものづくりが上手なだけではダメなんです」

ブレストケア京都 #2

2018/03/27

人工乳房が「生きなおそう」とするきっかけになる

森田 会社の取り組みや養成スクールのことを、時々テレビや新聞などで紹介してもらうこともあるので、たくさんの方からスクールへのお問い合わせもいただくんですが、私たちと同じ熱意と覚悟を共有できる方でないと、とても続かないので、受講者の人数は極力絞り込んでいる状態です。

 今まで1期から4期まで25名のスクール生が来て、今残っているのは5人ですもんね。

少しずつ粘土を削って、使う人に合った形へ

森田 私もそうでしたけど、乳がん経験者は、一度は「死」を覚悟します。その後、苦しさやつらさ、哀しみを乗り越えて、生きなおそうとするきっかけが「人工乳房」なんです。

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 医師の前以外では、家族にすら見せられなかった傷や心の痛みを、ここへ来て初めて、他人に話すことができる。その勇気もまるごと受け止め、支えられなければ、この仕事はできないんです。

 私は自分も乳がん経験者ではありませんし、周囲にもいなかったので、そういう意味ではお客様の本当の気持ちはわからないのかもしれません。だから、今は少しでもお客様とのコミュニケーションに役立てるよう、病気の知識を身につけようと頑張っています。

神田 私は、技術的にもっと上手になりたいです。そしていつか「神田さんに作ってほしい」と指名を受けられるようになりたい。

アメリカから輸入しているシリコン。「肌色」にも微妙な色の違いがある

笹川 私はもっとお客様のご負担を減らせるよう、すばやく仕上げられるようになりたいですね。ステインはすごく難しくて時間もかかる作業なので、美術を専攻していた方とかが仲間になってくれたらいいなあ。

 人工乳房に出会われた方は皆さん感激して、「もっと早く知りたかった」と言ってくださる方もたくさんいます。だから、私はもっともっと、私たちの思いや活動を伝えていくのが使命だと思っています。

 一人でも多くの方に、「人工乳房」という選択肢があることを知っていただき、自分らしく輝く人生のお手伝いをしていきたい。近い将来、関東にも拠点を持てたらいいなと考えています。まだ夢ですけど(笑)。

森田 神田さんや私のように、乳がんを経験したからこそ「一生の仕事」に出会えることもあります。「がんになったからできない」ではなく「がんになったからこそできることもある」と前を向くきっかけを、私たちがお手伝いできたら嬉しいですね。

 

写真=山元茂樹/文藝春秋

乳がん経験者のための人工乳房 製作スタッフが語る「ものづくりが上手なだけではダメなんです」

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