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乳がん経験者のための人工乳房 製作スタッフが語る「ものづくりが上手なだけではダメなんです」

ブレストケア京都 #2

2018/03/27

26歳で乳がんに。「自分の生きる道はこれしかない」

神田 私は26歳の時に乳がんに罹患して乳房を摘出しました。母が、たまたまブレストケア京都が紹介された新聞記事を見つけて、「行こう」って連れて行かれたんです。「娘が入りますので、スクールを開講してください」と母が言うのを聞いて「ムリや、絶対できない」って思ってました。

神田ちえさん

 でも、神田さんのお母さんのおかげでスクール2期の開講が決まったよね。

森田 1期生は5人のうち、乳がん経験者は1人だけだったものね。2期生3人は3人とも乳がん経験者だったから、いっきに経験者の割合が50パーセントになったのよね。

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 技術的には1期生の方が先輩ですけど、気持ちの面では2期生の方が高かったので、いい意味で社内の意識が高まった気がしますね。

 それで、技術的にももっと高みを目指して、笹川さんたちに入ってもらったんです。

ステイン(色付け)の作業は3時間が勝負

笹川 私はずっと日本画をやっていて、「ステイン」という色塗りを専門に担当しています。もちろんブレスト・アーティストのみなさんもできるんですけど、3時間でその人の体に合わせた色に仕上げるのって、技術以外に精神力も求められるので大変なんです。

笹川純子さん

森田 色塗りは、お客様が実際にできあがったシリコンの乳房型をお肌に装着した状態で作業するので、お客様がじっと座っていられる3時間が限度なんです。

 3時間のあいだに、肌のベース色のシリコンを「いつ、どんなふうに」使うのかも想定しながら、「その人」の色に仕上げていく作業は、技術力、精神力、コミュニケーション力のどれが不足していてもできません。

 ステイン作業が終わって、お客様に初めて鏡を見ていただくんですが「久しぶりに(自分の胸を)見た」と号泣する方もいらっしゃって、思わずもらい泣きすることもあります。

林かおりさん

神田 私は、舘さんたち先輩方が作るのを見て、絶対自分にはできないと思っていたんですけど、人工乳房を装着して喜んでくださるお客様の顔を見ているうちに、もう自分の生きる道はこれしかない、と思えるようになったんです。

 同じ乳がん経験者だからこそ伝えられる思いもありますし、喜びもわかちあえると思うんです。今は本当に、この仕事に出会えてよかったと思っています。

 私は神田さんのその言葉が嬉しい(笑)。

 私たちが扱っている製品は、ただの「もの」ではなく、その人の人生をかけた思いや夢、希望そのものなので、「ものづくりが上手」なだけではダメなんです。お客様と同じ温度で、お客様の思いを正確に形にできる熱意と技術がないとできませんから。