人工乳房や乳房パッドを専門とした製造・販売と、人工乳房製作者「ブレスト・アーティスト」を養成するスクール運営を行っている、ブレストケア京都株式会社。スクール修了生を積極的に「ブレスト・アーティスト」として採用し、スタッフの約半数は乳がん経験者だといいます。この会社で活躍する皆さんに、お話を伺いました。
・林かおりさん(46)代表
乳がんで乳房を失った母のために人工乳房製作技術を習得。現在は製品の普及と新製品開発、ブレスト・アーティストの育成に力を注ぐ。
・森田ひろみさん(67)(林さんの実母)
乳がんで乳房を摘出。再建手術を検討中に再発が見つかり、再建を断念。偶然新聞記事で目にした人工乳房に光を見出し、娘に夢を託した。
・舘あけみさん(52)製作担当/ブレスト・アーティスト
マネキンや人形などの立体造形を長年手がけ、新しいものづくりを模索中にブレスト・アーティストの存在を知る。スクール1期生。
・神田ちえさん(29・仮名)製作担当/ブレスト・アーティスト
26歳で乳がんに罹患し全摘出。1期生の紹介記事を見て「私の生きる道はこれしかない」と決意し、ブレスト・アーティストを目指した。スクール2期生。
・笹川純子さん(60)ステイン担当
乳がん経験者の友人に誘われて見学に来て、活動内容に共感しスクール生に。日本画の制作経験を生かして、ステイン(色付け)担当として活躍している。
そもそもは、私が乳がんになったことが始まりです
森田 そもそもは、私が乳がんになったことが(会社設立の)始まりです。乳房を再建したくて予約までしたんですけど、再発して再建手術ができないと言われたんです。悩んでいる時に、たまたま名古屋の「池山メディカルジャパン」の人工乳房製作技術者養成講座があるという新聞記事を読み、陶芸講師だった娘にちょっと行ってみてほしいと頼みました。
林 「粘土だから同じでしょ、行って」だったよね(笑)。でも、「まあ何とかなるやろう」と行ったら、想像もしていなかった世界で、「嘘やん、全然違うやん」と、衝撃を受けました。
ものづくりには自信があったんですが……
笹川 単純に「ものづくり」ではないですよね。色付けも、型取りも。
舘 そうなんですよね。私は人形師として、マネキン製作などの立体造形を手がけてきたので、ものづくりには自信があったんです。ちょうど、新しい道を模索していた時に養成スクールの募集を見つけ、「自分ならできる」と簡単に応募したのですが、入ってみたら難しいし大変だし。「ああ、間違えた」と最初は思いました(笑)。
林 そう、難しいんですよ。私、今思い返しても、修業で名古屋に通っていた3年間が、一番つらかったもの。どんなに練習しても思うとおりにできなくて。今思うとなんであそこまで頑張れたのか不思議です(笑)。