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元中日の英智が明かす、プロ野球選手が“張り”や“違和感”という言葉を使う理由

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/07/12
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 プロ野球選手であれば誰もが認める一流プレーヤーとて怪我はつきものです。疲労の蓄積での怪我は成り行きとして想定できますが、どれだけ注意していても不可抗力で起こってしまう予測できない怪我もあります。必死のプレーは勝利のためですから、どうにも怪我というものは仕方ないといった位置付けです。

治療院のハシゴは当たり前

 シーズン中、スケジュール通り試合を消化していくと、おおよそ月曜日が休みや移動日になります。まれにチームの練習が入ったりはしますが、隙間の時間を見つけては、選手各々行きつけの治療院に駆け込みます。選手にとって治療院はまさに“駆け込み寺”です。

 治療院といってもいろいろな種類があります。例えば全身をほぐして疲れをとるマッサージ、身体のバランスを整えて矯正してくれる整体、故障した患部への針治療や電気治療など、さまざまです。特殊な小さな機械の部屋に入って休む酸素カプセルを利用したこともあれば、時には気功的なものにも頼った経験があります。

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 優勝争いを繰り広げて連戦が続いていた頃は、控えだった私でも疲れがピーク。マッサージへ行った後、さらに整体院に移動して……と、治療院のハシゴを頻繁にしていました。

現役時代の筆者・英智 ©時事通信社

 控えの私でさえ休み明けなのに疲労感たっぷりですから、はたして毎日レギュラーで試合にフル出場している人はどうなのか? 気になったので先輩の井端さんに「体は大丈夫ですか?」と聞いたら、「昨日は治療院に3軒行ったよ」と教えてくれました。まったく驚くことなく「そうでしょうね!」と腑に落ちました。プロ野球選手は自分の身体を万全の状態に近づけられるのなら、何軒もの治療院へ足を運ぶ労力は惜しまないのです。

 しかし、どれだけ備えをしていたとしても、不測の事態で怪我をしてしまうことがあります。一軍にいる選手なら、決して口には出しませんが、怪我でチームを離れることを恐れているはずです。休んでいたら、いつ自分のポジションが他の選手に奪われてしまうかわかりません。今のドラゴンズであれば、大野雄大投手は疲労が積み重なっての怪我ではありますが、少なからずそうした不安な日々を過ごしているのではないかと感じます。

 実際、私は過去に怪我をした主力選手(福留さんなど)の代わりに試合に出られた経験があります。チームにとっては非常にマイナスなのですが、代わりに出場の機会が増える私のような控え選手からしたら、とても大きなチャンスなのです。

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