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今川優馬選手を待っている、いまファイターズに足りない「執念」

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/07/14
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そうか、いま足りないのは「執念」だ

 今川選手を欠いてからのチームは、よくもわるくも……どちらかと言えば……わるかった。他にもけが人が出たし、首脳陣が思ったような布陣が組めないこともあった。借金はいったん「3」まで減らしたけれど、なかなか返済まで辿り着かない。順位も4位ではあってもAクラスからは大きく離されたままで上位の壁は厚かった。

 なんと言っても「あのゲームを取れていれば……」と悔やまれる試合が多過ぎた。1点差ゲームを落とし過ぎていたのだ。1点差で劣勢でいけば当然いい投手が出てくる、そこを打ち崩せない。

 優勢でいけば当然こちらはいい投手を出すのに捉えられてしまっての逆転負けもあった。いい試合が出来ているのは間違いない、だったら何が足りないんだろう……。もやもやしていると、ふと頭の片隅に人差し指を立て執念ポーズの笑顔の今川選手が現れることがあった。

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 負ける試合はミスも多かった。取れたはずの打球、どうしてそこでというお見合い、なぜ走ったか疑問の走塁判断ミス、もったいないダブルプレー、見破られるスクイズ、美しすぎるトンネル……。うまくいかないことがあると、その度に今川選手の姿が頭をかすめた。

 逆の場面もそうだった。勝ち試合やナイスプレーの喜びの瞬間、ここに今川選手がいたらどのくらいの笑顔なんだろうと想像した、そして気づく。そうか、いま足りないのは「執念」だと私は思っているのか。だからことあるごとにリハビリ中でそこにはいないのに今川選手が頭の中に現れるのか。早く今川選手に戻ってきてほしい、心の底でそう思っているのか。

無理はしないでと願いつつ私は焦っている

 私はHBCラジオでファイターズの応援番組を長く担当している。日々、試合についてはもちろん、選手についてのリリースも発信する。番組では選手が怪我をした場合や手術の時は、「しっかりと治してほしい」と言う。そこに「焦らずに」と必ず加える。でも今回の今川選手については私が明らかに焦っていた。

 早く帰ってきてほしい。早く彼の姿でチームに「執念」を届けてもらわないと困る。今までこんな風に思わせる選手はいただろうか。

 そして約2か月のリハビリを経て今川選手は2軍で試合に出場した。7月2日、試合復帰、3試合目の7月6日にはフル出場し復帰後初安打初打点。まだ痛みはあると聞いて心配もあったが、7月8日の鎌ケ谷のイーグルス戦もフル出場しホームランも打った。思えばエスコン初のホームランは今川選手だった。3月22日のオープン戦、あの日以来、108日ぶりの1本だった。

 同じ日、後輩の細川選手はエスコンで一時は勝ち越しとなるタイムリーを打っていた。球団からリリースされたコメントは「執念で打ちました!」。みんなが待っている、そう感じて胸が震えた。

 7月13日、本拠地でのイーグルス戦でファイターズは6試合連続で1点差で試合を落とした。今季1点差ゲームはこれで9勝24敗。新庄監督は「誰か爆発してくれる選手、流れを変えてくれる選手を探している」と言った。この言葉を知って、うずうずしている彼の様子が見えるようだ。無理はしないでと願いつつ私は焦っている、こんなことは初めてだ、早く今川選手に戻ってきてほしい。執念が圧倒的に足りない。

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