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167センチのファイターズ新戦力・山本拓実は“小さな勝負師”武田久、谷元圭介の系譜を継げるか

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/07/05
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移籍してきた山本拓実…鎌ケ谷のマウンドで修行した「師匠」にうり二つの姿

 伝統がつながるとは、こういうことなのかと思った。

 6月24日、日本ハム2軍が本拠地とする千葉・鎌ケ谷スタジアムのスタンドはいつもより少しだけ騒々しかった。紫のド派手な衣装で、この球場のイメージキャラクター役を務めて10年になる「DJチャス。」が様々なイベントを仕掛けた……せいもあるだろう。ただこの連戦、スタンドの興味は新戦力に向いていた。

 交流戦が終わると同時に、日本ハムのフロントは動いた。中日との間で2対2の交換トレードを成立させたのだ。昨年は81試合に出場し、オフには「ももいろクローバーZ」の高城れにさんとの結婚発表でも沸かせてくれた宇佐見真吾捕手と、オリックスからオフにやってきたばかりの変則左腕、齋藤綱記投手が移籍していった。宇佐見は今季、1軍では開幕から16打席ノーヒットに終わると2軍落ちし、その後昇格がなかった。新天地では早速、活躍の機会を得られているようで何よりだ。齋藤綱は札幌出身。地元での活躍は叶わなかったが、特徴を生かして活路を開いてほしい。

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 そして中日からやってきたのが、150キロを超える剛球が武器の山本拓実投手と、仙台育英高時代には夏の甲子園で準優勝したこともある郡司裕也捕手だ。山本は今季中日では14試合に投げ防御率5.54、郡司は2軍で好成績を残したものの1軍では1試合、1打席に立っただけ。こちらも日本ハムでは出番が増えるだろう。両者にメリットのあるトレードになることを祈る。

中日から日本ハムにトレードで加入した山本拓実投手(右)と郡司裕也捕手 ©時事通信社

 そして冒頭の鎌ケ谷での試合、可能性の一端を見せてくれたのが山本拓だった。

 移籍後初マウンドは、DeNAに1−12とリードされた7回だった。最初の打者との対戦中、スコアボードには早くも「150」の文字が浮かび上がった。遊撃への内野安打と四球で無死一、二塁のピンチを背負ったが、そこから2連続三振と中飛でピンチをしのいだ。ベンチ前に戻ると、戻ってくる外野手含めた全員とタッチを交わそうと、ずっと待っていた。律儀なのだなと思った。

 スタンドから見ていて何より驚いたのが、まとう空気がそっくりなのだ。かつてここで修行していた谷元圭介に。

 モーションを起こす前に、右手をまっすぐ上に上げるところ、やや前屈みになってサインをのぞくところ、そしてぶっとい太ももで地面を蹴るところ…。2017年の夏、オールスター出場直後に日本ハムから中日へトレードされた谷元が、帰ってきたのかと思ったほどだ。走者を抱えても淡々と投げ続けるところもうり二つだ。

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