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“ウル虎の夏”に思い出す、阪神の天才デザイナー・早川源一氏の功績

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/07/26
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阪神に天才デザイナーあり

 ご存じの方も多いと思いますが、タイガースは球団旗(黄色と黒の横縞、赤丸に虎の顔)や、袖章(虎の顔マーク)も球団創設当初からほぼ変更なく使っています。ホームユニ「Tigers」の胸マークともども、すべて阪神電鉄に所属していたデザイナー・早川源一氏の手によるものとされています。

 ユニフォーム研究の第一人者・綱島理友氏によると、大阪タイガースから阪神タイガースに改称した1961年に誕生した、帽子のHTマークも「証拠はないが、流れから早川氏のデザインである可能性が高い」とのこと。

 虎というモチーフは、カッコイイ、力強い、精悍というイメージがあります。それを90年近く前に書体やペットマークとして具象化し、ほとんど変更もないまま受け継がれ、古びることなく、カッコイイと愛される。まさに天才のデザイン、神の領域とさえ思えます。

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早川源一氏は野球殿堂に入るべき!

 早川源一氏は、1906年生まれ、1976年没。美大卒業後に阪神電鉄に入社してデザイン室一筋、退職後もフリーランスとして球団関連のデザインを手がけたといいます。電鉄や球団の仕事だけでなく、プロ野球創生期から連盟関係のポスターや、旗の製作にも携わっています。

 ベーブ・ルースの肖像が大きく描かれた「日米大野球戦(甲子園、1934年)」、「大阪タイガース来る(1936年)」のポスターや、初代のセントラルリーグ連盟旗も早川氏の作品で、プロ野球史の貴重な資料として野球殿堂に収められています。

 今昔のタイガースファンが、変わらず誇りに思い、愛し続けるデザイン。私は、作品だけでなく早川源一氏自身も野球殿堂入りにふさわしいと思うのですが、候補に入ったという話は聞いたことがありません。

 野球殿堂入り表彰者のうち、「野球に関する文芸・学術・美術・音楽等の著作物を有する者や、報道関係者としての実績がある者」が選出される特別表彰。その要件は、次のように規定されています。

 下記の要件のうち、二つ以上に該当している者とする。

【中略】
(6)国民的関心の拡大と理解の深化により、野球の底辺拡大に顕著な功績をあげた者
(7)野球文化の発展、魅力の発信に顕著な功績をあげた者

 興行を盛り上げるポスターの製作により、多くの観衆の期待をあおった功績、そして今なお愛され続ける阪神タイガースのデザインで、野球の魅力を発信した功績、文句なしだと思うのですが、いかがでしょうか。

 ジャイアンツには、通算の勝ち負けや優勝回数ではまるっきり勝てませんが、デザインの優秀さでは完勝です。さて、今回も最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。もし、「早川氏の殿堂入り運動」にご賛同いただけるようなら、HITボタンのポチをお願いします(配信先でお読みの方は、文春オンラインのオリジナルページで応援していただけると嬉しいです)。ではまたいつか。

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